オンラインデーティングの検証
批判的レビュー・2012年・Psychological Science in the Public Interest
この研究は何をしたか
オンラインデーティングが提供する3つの機能(出会いの拡大・コミュニケーション・マッチングアルゴリズム)を、心理学の知見に照らして検討した。
何が分かったか
出会いの数を増やす点は明確な利点。一方、事前のプロフィール情報から相性を予測できるという主張には、支持する証拠が乏しい。
読むときの注意
2012年時点のレビュー。サービスの形態は変わっているが、マッチング予測の困難さという論点は Joel et al. (2020) とも整合する。
この研究が根拠になっている悩み(10件)
- 会う回数を増やせば好かれるのか 強い
単純接触効果はしっかりしている。ただし上限があり、増やし続けると頭打ちか下降に転じる。退屈しやすい人には出にくい。 - モテは一本の序列で決まるのか 弱い
人が惹かれる理由は複数あって、1本の順位にまとめる根拠はない。 - 相性のいい相手は事前に分かるのか 弱い
相手の属性から相性を予測する試みは、うまくいっていない。効いていたのは「その関係をどう感じているか」のほう。 - 理想のタイプを決めておくべきか 弱い
事前に申告した理想は、実際の魅力判断をほとんど予測しない。 - 「男が追う、女が待つ」はどこから来たのか そこそこ
行動の男女差の多くは、それぞれが置かれた社会的な役割と、そこで期待される振る舞いから説明できる。 - 元彼が忘れられないのは、なぜか そこそこ
忘れられなさは自己概念の明確さの低下として測られ、回復はその回復として測られている。 - 不安型は治せるのか そこそこ
不安の目盛りは動く。動かすのは自分の目標を後押しされる経験で、速さは年単位。 - 言葉づかいが揃うと、関係は続きやすいのか そこそこ
機能語の使い方の一致度が、関係の始まりと継続と関連する。 - 「37%を見送ってから決めろ」は正しいのか 弱い
37%という数字は厳密な条件下での最適解であり、恋愛はその条件を満たしていない。 - 安心させてもらえば、不安は落ち着くのか そこそこ
安心の感覚は「いま」の不安と、応援の感覚は「その後」の低下と結びついていた。
関係する理論
- 単純接触効果(社会心理学と認知心理学の境界 / 感情研究)
繰り返し接触するだけで、対象への好意度が上がる。 - 配偶者選好(進化心理学 / その批判的検証)
パートナーに求める条件と、その性差をめぐる研究群。 - 関係は予測できるのか(関係科学 / 方法論)
43の縦断研究を機械学習で統合した結果、関係の質をもっとも強く予測したのは、相手の属性ではなく回答者自身が関係をどう感じているか(コミットメント・感謝・満足)だった。 - 言葉づかいの同調(計算言語学 / 関係研究への応用)
助詞や代名詞といった機能語の使い方がどれくらい揃っているかが、関係の始まりと続きやすさと関連する。
同じ話題で参照している研究
- 単純接触効果の原典(実験・1968)
接触の反復それ自体が好意を生む。理由づけや報酬を必要としない。 - 単純接触のメタ分析(メタ分析・1989)
効果量 r = .26。研究全体で、提示時間が短いほど効果が大きかった。意識できないほど短い(閾下の)提示のほうが、はっきり認識できる提示より効果がかなり強かった(Bornstein ら, 1990 の要約による)。 - 情動の二要因理論(実験・1962)
同じ興奮でも、それをどう解釈するかで感じる情動が変わる。吊り橋実験はこの理論の応用として設計された。 - 類似性のメタ分析(メタ分析・2008)
実際の類似性 r = .47、知覚された類似性 r = .39。ただし実際の類似性は既存の関係では有意にならず、知覚された類似性は全段階で効いた。 - 離婚予測の交差検証問題(方法論批判・2001)
交差検証を行うと、精度と予測的中率が大きく低下する。報告されていた80〜90%台は、結果を知った後の当てはめによる部分が大きい。 - 恋愛への愛着理論の適用(実証研究・1987)
恋愛関係にも、安定・不安・回避に対応するパターンが観察されることを示した。以後の成人愛着研究の出発点。
書誌情報
Finkel, E. J., Eastwick, P. W., Karney, B. R., Reis, H. T., & Sprecher, S. (2012). Online dating: A critical analysis from the perspective of psychological science. Psychological Science in the Public Interest, 13(1), 3–66.