悩み 60
「37%を見送ってから決めろ」は正しいのか
数学の問題としては正しく、恋愛への処方としては前提が合っていません。
結論から言うと
候補を順に見て最良の1人を選ぶ問題では、最初の約37%を見送ってから、それを超える最初の相手を選ぶのが最適です。ただしその前提を、恋愛はひとつも満たしていません。
恋愛工学の答え
「見極めの期間を決めて、そこからは即断しろ。」
判断の手順を決めておく運用です。37%という数字が根拠として引かれることがあります。
研究の答え
37%という数字は厳密な条件下での最適解であり、恋愛はその条件を満たしていない。
もとは数学のパズルです。候補を順に1人ずつ見て、最良の1人を選びたい。このとき最初の約37%を見送ってから、それを超える最初の相手を選ぶと、最良を当てられる確率が最大になります。
計算としては正しい結論です。問題は前提のほうです。
候補の総数があらかじめ分かっている。順序がばらばらに来る。一度断ったら戻れない。目的は最良の1人を当てることで、2番目にいい相手を選んだ場合の価値はゼロ。そして相手には選ぶ権利がない。
恋愛は、このどれひとつ満たしていません。とくに最後の2つが致命的です。2番目でも十分よい関係は成り立ちますし、相手もこちらを選んでいます。
前提を外した瞬間、37%という数字は根拠を失います。 有名な数字が前提ごと落として流通する例として置いています。
出典:Ferguson (1989)
研究の中身
Ferguson, T. S. (1989). Who solved the secretary problem? Statistical Science, 4(3), 282–289.
何をしたか
「最良の1人を選ぶには、最初の一定割合を見送ってから、それまでの最良を超えた最初の相手を選ぶのがよい」という問題の来歴と解法を整理した。
何が分かったか
候補を順に見て、最初の約37%を見送ってから、それを超える最初の相手を選ぶと、最良を選べる確率が最大になる。
どのくらいの強さか
数学の問題としての整理であり、恋愛への処方ではない。
議論されている点
前提が厳しく、恋愛はそのどれも満たしていません。
候補の総数が分かっている。順序がばらばらに来る。一度断ったら戻れない。目的は最良の1人を当てることで、2番目では価値がゼロ。相手にも選ぶ権利がない。
とくに後半の2つが致命的です。2番目でも十分よい関係は成り立ちますし、相手もこちらを選んでいます。前提を外した瞬間、37%という数字は根拠を失います。
否定されるのは数字の根拠であって、見極めの期間を決めるという発想そのものではありません。
使っている理論
- 最適停止(37%ルール)(統計・意思決定理論)— 候補を順に見て最良の1人を選ぶとき、最初の約37%を見送ってから、それを超える最初の相手を選ぶのが最適になる。
- 関係は予測できるのか(関係科学 / 方法論)— 43の縦断研究を機械学習で統合した結果、関係の質をもっとも強く予測したのは、相手の属性ではなく回答者自身が関係をどう感じているか(コミットメント・感謝・満足)だった。
- 交差検証(統計・研究方法論)— モデルを作ったのと別のデータで性能を確かめる手続き。これを行わないと、精度は必然的に高く出る。
参照している研究
- Heyman, R. E., & Smith Slep, A. M. (2001). The hazards of predicting divorce without crossvalidation. Journal of Marriage and Family, 63(2), 473–479.
- Eastwick, P. W., & Finkel, E. J. (2008). Sex differences in mate preferences revisited: Do people know what they initially desire in a romantic partner? Journal of Personality and Social Psychology, 94(2), 245–264.
- Joel, S., Eastwick, P. W., et al. (2020). Machine learning uncovers the most robust self-report predictors of relationship quality across 43 longitudinal couples studies. PNAS, 117(32), 19061–19071.
- Finkel, E. J., Eastwick, P. W., Karney, B. R., Reis, H. T., & Sprecher, S. (2012). Online dating: A critical analysis from the perspective of psychological science. Psychological Science in the Public Interest, 13(1), 3–66.
- Ferguson, T. S. (1989). Who solved the secretary problem? Statistical Science, 4(3), 282–289.