悩み 21

「男が追う、女が待つ」はどこから来たのか

男が追い、女が待つ。これは生まれつきなのか。

結論から言うと

脳の違いより、置かれた役割で説明できる部分が大きい。役割の分かれ方が違う社会では、行動の差も小さくなる。

恋愛工学の答え

「男女の役割は生物学的に決まっている。逆らうと不自然になる。」

「原始時代には」「狩猟採集期には」という前置きとセットで語られる、恋愛工学の土台部分です。

研究の答え

行動の男女差の多くは、それぞれが置かれた社会的な役割と、そこで期待される振る舞いから説明できる。

同じデータに対して、進化した生得的傾向による説明と、社会的役割による説明を並べて比較した論文があります。

社会的役割の側の説明力は高く、しかも検証可能な予測を持ちます。**役割配置が変われば性差の大きさも変わるはず**、という予測です。実際、多くの性差は文化間で大きさが変わることが観測されています。

これは生得的要因の全否定ではなく、説明の重みづけをめぐる議論です。ただ「生物学的に決まっているから変わらない」という主張よりは、はるかに検証しやすい形をしています。

出典:Eagly, A. H., & Wood, W. (1999), American Psychologist, 54(6), 408–423

研究の中身

Eagly, A. H., & Wood, W. (1999). The origins of sex differences in human behavior: Evolved dispositions versus social roles. American Psychologist, 54(6), 408–423.
何をしたか
行動の性差について、進化した生得的傾向による説明と、社会的役割による説明を、同じデータに対する競合する説明として並べて検討した。
何が分かったか
多くの性差は、男女が占める社会的役割と、そこで期待される振る舞いから説明できる。役割配置が変われば性差の大きさも変わるという予測を持つ。
どのくらいの強さか
理論的レビュー。文化間比較のデータが主要な論拠。

攻略

男性が読む場合

相手の内側で起きていること
相手が「追われたい」ように見えるとき、それは内的な欲求というより、その役割を期待される環境で育った結果かもしれない。役割の台本は無自覚に働くので、本人にも区別がつかない。
どう活かすか
台本どおりに振る舞うことも、外れることも選べる。重要なのは、外れたときの相手の反応が「不自然だから」ではなく「台本と違うから」だと理解しておくこと。相手が戸惑ったとき、拒絶と読み違えない。
使える場面
自分から誘うのをためらうとき。相手が受け身に見えるとき。役割分担で違和感を覚えたとき。

女性が読む場合

相手の内側で起きていること
相手が押してくるのも、押してこないのも、台本の影響を受けている。「男なら普通は」という期待は、あなたの側にも内面化されている可能性がある。
どう活かすか
相手の行動を「男だから/男なのに」で評価する前に、その基準がどこから来たかを一度分ける。台本を採用するかどうかは選べるが、無自覚だと選べない。
使える場面
相手が引っ張ってくれないと感じたとき。自分から動くことに抵抗があるとき。「男らしくない」と思ってしまったとき。
この機構自体に性差はほとんど報告されていません。違うのは置かれる状況と、社会的な台本のほうです。
「どう活かすか」「使える場面」はモデルから導かれる読み方であって、その手順の効果を検証した研究があるわけではありません。

議論されている点

これは生得的要因を全否定する主張ではありません。同じデータに対する説明の重みづけをめぐる議論で、決着していません。

このサイトが社会的説明の側を重く扱うのは、**検証可能な予測を持つから**です。「役割が変われば差も変わる」は確かめられます。「原始時代にそうだったから」は確かめられません。反証できる主張のほうを採るという、それだけの理由です。

使っている理論

  • 社会的役割理論(社会心理学 / 性差の起源をめぐる論争)— 行動の性差の多くは、男女が社会の中で占める役割と、そこで期待される振る舞いから生じる。
  • 配偶者選好(進化心理学 / その批判的検証)— パートナーに求める条件と、その性差をめぐる研究群。
恋愛の俗説を、心理学の原典まで遡って確かめています。
根拠の強さを書けない主張は、このサイトでは扱いません。