悩み 10
相性のいい相手は事前に分かるのか
会う前に、相性のいい相手を見つけることはできるのか。
結論から言うと
できていない。1万人以上のデータを機械学習にかけても、相手の条件からは当たらなかった。当たったのは「その関係を今どう感じているか」だけ。
恋愛工学の答え
「条件で相手を選別せよ。合う相手を見極めれば失敗は減る。」
スペックによるスクリーニングを前提にする発想です。マッチングサービスの設計思想とも重なります。
研究の答え
相手の属性から相性を予測する試みは、うまくいっていない。効いていたのは「その関係をどう感じているか」のほう。
43件の追跡調査をまとめ、機械学習で「関係の質を当てるのは何か」を総当たりで探した研究があります。
もっとも強く効いたのは、相手の条件ではありませんでした。本人がその関係をどう感じているか。続ける気持ち、感謝、満足の3つです。相手側の変数の寄与は小さかった。
マッチングアプリについても同じです。プロフィールの情報から相性を当てられる、という主張を支える証拠は乏しい。大規模なレビューがそう結論しています。
「誰と付き合うか」より「その関係をどう感じているか」のほうが予測力を持つ、というのが現時点の結果です。
出典:Joel et al. (2020), PNAS, 117(32), 19061–19071 / Finkel et al. (2012), Psychological Science in the Public Interest, 13(1), 3–66
研究の中身
Joel, S., Eastwick, P. W., et al. (2020). Machine learning uncovers the most robust self-report predictors of relationship quality across 43 longitudinal couples studies. PNAS, 117(32), 19061–19071.
何をしたか
43の縦断的なカップル研究のデータを統合し、機械学習で関係の質を予測する変数を網羅的に探した。相手側の変数と、回答者自身の関係への感じ方を分けて比較している。
何が分かったか
もっとも強く効いたのは、コミットメント・感謝・満足といった、回答者自身がその関係をどう感じているかを示す変数だった。相手の属性の寄与は小さかった。
どのくらいの強さか
43研究の統合。自己申告データが中心。
攻略
男性が読む場合
相手の内側で起きていること
43の追跡研究を統合した結果、関係の質を予測したのは相手の属性ではなく、本人がその関係をどう感じているか(コミットメント・感謝・満足)だった。相手側の変数の寄与は小さい。
どう活かすか
条件でのスクリーニングに投じる時間を、関係の運用に移すほうが期待値が高い可能性がある。選別の精度を上げる努力は、そもそも予測できない対象を相手にしている。
使える場面
マッチングアプリで条件を絞るとき。「合わないかも」と早期に切ろうとしたとき。理想と違う相手に惹かれたとき。
女性が読む場合
相手の内側で起きていること
相手が「条件が合わないから」と説明するとき、その説明は事後的にはいくらでも作れる。集団レベルでは、条件より関係の感じ方のほうが効いていた。
どう活かすか
条件で選ばれなかったことを、自分の価値の証拠として扱わない。逆に、条件が揃った相手との関係が続く保証にもならない。判断を「感じ方」の側に置き直す。
使える場面
条件で比較されたと感じたとき。スペックの高い相手との関係が続かなかったとき。相手を条件で選ぶべきか迷ったとき。
この機構自体に性差はほとんど報告されていません。違うのは置かれる状況と、社会的な台本のほうです。
「どう活かすか」「使える場面」はモデルから導かれる読み方であって、その手順の効果を検証した研究があるわけではありません。
「どう活かすか」「使える場面」はモデルから導かれる読み方であって、その手順の効果を検証した研究があるわけではありません。
議論されている点
予測できたのは集団レベルの傾向であって、個別のカップルの将来を当てるものではありません。ここを混同すると「科学的に相性が分かる/分からない」という別の主張になります。
また自己申告のデータが中心なので、測れていない変数(行動、生理指標、環境)に予測力がある可能性は残ります。「相手の属性に予測力がない」ではなく「これまで測ってきた自己申告の属性では予測できなかった」が正確です。
使っている理論
- 関係は予測できるのか(関係科学 / 方法論)— 43の縦断研究を機械学習で統合した結果、関係の質をもっとも強く予測したのは、相手の属性ではなく回答者自身が関係をどう感じているか(コミットメント・感謝・満足)だった。
参照している研究
- Eastwick, P. W., & Finkel, E. J. (2008). Sex differences in mate preferences revisited: Do people know what they initially desire in a romantic partner? Journal of Personality and Social Psychology, 94(2), 245–264.
- Joel, S., Eastwick, P. W., et al. (2020). Machine learning uncovers the most robust self-report predictors of relationship quality across 43 longitudinal couples studies. PNAS, 117(32), 19061–19071.
- Finkel, E. J., Eastwick, P. W., Karney, B. R., Reis, H. T., & Sprecher, S. (2012). Online dating: A critical analysis from the perspective of psychological science. Psychological Science in the Public Interest, 13(1), 3–66.