悩み 11

理想のタイプを決めておくべきか

「理想のタイプ」を決めておくと、いい人に出会えるのか。

結論から言うと

自分で挙げた条件は、実際に誰に惹かれるかをほとんど当てなかった。条件を満たす人に会っても、惹かれるとは限らない。

恋愛工学の答え

「求める条件を明確にしろ。基準がないから迷う。」

判断を高速化するための基準づくり。運用としては合理的です。

研究の答え

事前に申告した理想は、実際の魅力判断をほとんど予測しない。

スピードデートを使った研究があります。事前に本人が挙げた「理想の条件」が、実際に会った相手への惹かれ方をどれだけ当てるかを調べたものです。

結果は、ほとんど予測しませんでした。しかも、申告の段階では見られた性差が、実際の選択にはほとんど現れませんでした。

人は自分が何に惹かれるかを、事前にはあまり正確に言えない。「男女で理想の条件が違う」という有名な37カ国調査がありますが、あれが扱っているのも本人の申告です。そこを踏まえて読む必要があります。

出典:Eastwick, P. W., & Finkel, E. J. (2008), JPSP, 94(2), 245–264

研究の中身

Eastwick, P. W., & Finkel, E. J. (2008). Sex differences in mate preferences revisited: Do people know what they initially desire in a romantic partner? Journal of Personality and Social Psychology, 94(2), 245–264.
何をしたか
スピードデーティングを用い、事前に申告した理想の条件が、実際に会った相手への魅力の判断をどのくらい予測するかを調べた。
何が分かったか
事前の理想は、実際の魅力判断をほとんど予測しなかった。申告段階では見られた性差も、実際の選択にはほとんど現れなかった。
どのくらいの強さか
実際の出会いの場面を使った点がこの研究の価値。

攻略

男性が読む場合

相手の内側で起きていること
相手が申告する「理想のタイプ」は、実際に誰に惹かれるかをほとんど予測しない。しかも申告段階では見られた性差が、実際の選択にはほとんど現れなかった。
どう活かすか
相手が言う条件に自分を寄せる戦略は、当てにならない前提の上に立っている。プロフィールの条件欄より、実際に会ったときの反応のほうが情報量が多い。
使える場面
相手の「理想のタイプ」を聞いたとき。自分が条件から外れていると感じたとき。アプリのプロフィールで条件を書くとき。

女性が読む場合

相手の内側で起きていること
自分が言う理想と、実際に惹かれる相手がずれるのは一般的に観測されること。あなたが矛盾しているのではなく、人は自分の反応を事前に正確には言えない。
どう活かすか
理想を決めて絞り込む前に、実際に会ったときの反応をデータにする。理想から外れた相手を、その理由だけで切らない。
使える場面
理想と違う人を好きになったとき。条件を決めて婚活を始めるとき。周囲に相手の条件を説明するとき。
この機構自体に性差はほとんど報告されていません。違うのは置かれる状況と、社会的な台本のほうです。
「どう活かすか」「使える場面」はモデルから導かれる読み方であって、その手順の効果を検証した研究があるわけではありません。

議論されている点

扱っているのは出会いの初期の魅力です。長期的なパートナー選択や、関係が続いた後の満足度に理想が効くかは、別に検討されるべき問題です。

また「理想は無意味」ではありません。予測しなかったのは初対面の魅力であって、理想を持つこと自体を否定する結果ではない。

使っている理論

  • 配偶者選好(進化心理学 / その批判的検証)— パートナーに求める条件と、その性差をめぐる研究群。
  • 関係は予測できるのか(関係科学 / 方法論)— 43の縦断研究を機械学習で統合した結果、関係の質をもっとも強く予測したのは、相手の属性ではなく回答者自身が関係をどう感じているか(コミットメント・感謝・満足)だった。
恋愛の俗説を、心理学の原典まで遡って確かめています。
根拠の強さを書けない主張は、このサイトでは扱いません。