悩み 48
頼み事をすると、好かれるのか
ベンジャミン・フランクリン効果。理屈は通っていますが、裏づけは薄い。
結論から言うと
してあげた側のほうが相手を好きになる、という効果です。認知的不協和から説明がつきます。ただし裏づけは1969年の実験がほぼ単独で担っており、追試が積み上がっていません。
恋愛工学の答え
「頼み事をして、相手に投資させろ。」
相手に手間をかけさせることで好意を作る運用です。この法則を根拠として引くことが多い。
研究の答え
人に何かをしてあげた側のほうが、相手への好意が上がる場合がある。
実験では、実験者本人から直接頼まれて応じた人が、実験者をもっとも好意的に評価しました。第三者を介して頼まれた場合、この差は出ていません。
説明は認知的不協和です。嫌いな相手のために手間をかけた、という状態は自分の中で辻褄が合いません。行動は変えられないので、好意のほうが調整される、という筋です。
理屈としては、押して引くを説明する不協和理論と同じ枠組みに乗っています。この整合性が、この効果が支持されている主な理由です。
ただし裏づけの薄さは押さえておく必要があります。1969年の実験がほぼ単独で支えており、恋愛場面での追試はほとんど行われていません。
出典:Jecker & Landy (1969)/Festinger (1957) の認知的不協和
研究の中身
Jecker, J., & Landy, D. (1969). Liking a person as a function of doing him a favour. Human Relations, 22(4), 371–378.
何をしたか
実験の報酬を受け取った参加者に、実験者本人から返してほしいと頼む条件などを設け、実験者への好意を比べた。
何が分かったか
実験者から直接頼まれて応じた人が、実験者をもっとも好意的に評価した。第三者を介して頼まれた場合、この差は出なかった。
どのくらいの強さか
1969年の単一実験。標本は大きくない。
議論されている点
裏づけがこの実験にほぼ単独で依存しています。 恋愛場面での追試はほとんど行われていません。
支持されている主な理由は、認知的不協和の枠組みと整合的である点です。理屈が通っていることと、実証が積み上がっていることは別なので、判定はここで止めています。効果量も条件も分かっていません。
使っている理論
- ベンジャミン・フランクリン効果(社会心理学 / 認知的一貫性の応用)— 人に何かをしてもらった側ではなく、してあげた側のほうが、相手を好きになるという効果。
- 認知的不協和(社会心理学 / 認知的一貫性理論)— 自分の行動と考えが食い違うと不快になり、つじつまを合わせる方向に考えのほうが動く。恋愛の文脈でよく引かれるのは「努力の正当化」——手に入れるのに苦労したものを高く評価する働き。
参照している研究
- Aronson, E., & Mills, J. (1959). The effect of severity of initiation on liking for a group. Journal of Abnormal and Social Psychology, 59(2), 177–181.
- Festinger, L. (1957). A Theory of Cognitive Dissonance. Stanford University Press.
- Festinger, L., Schachter, S., & Back, K. (1950). Social Pressures in Informal Groups: A Study of Human Factors in Housing. Harper.
- Aron, A., Melinat, E., Aron, E. N., Vallone, R. D., & Bator, R. J. (1997). The experimental generation of interpersonal closeness: A procedure and some preliminary findings. Personality and Social Psychology Bulletin, 23(4), 363–377.
- Aron, A., Norman, C. C., Aron, E. N., McKenna, C., & Heyman, R. E. (2000). Couples' shared participation in novel and arousing activities and experienced relationship quality. Journal of Personality and Social Psychology, 78(2), 273–284.
- Aron, A., Aron, E. N., & Smollan, D. (1992). Inclusion of Other in the Self Scale and the structure of interpersonal closeness. Journal of Personality and Social Psychology, 63(4), 596–612.
- Jecker, J., & Landy, D. (1969). Liking a person as a function of doing him a favour. Human Relations, 22(4), 371–378.
- Aronson, E., & Linder, D. (1965). Gain and loss of esteem as determinants of interpersonal attractiveness. Journal of Experimental Social Psychology, 1(2), 156–171.