悩み 13

尽くすと重いと思われるのか

尽くすと重いと思われる、という話をよく聞く。

結論から言うと

同じ行為が関係の種類で逆になる。「お互い様」で動く関係では喜ばれ、「貸し借り」で動く関係では負担になる。量ではなく関係の型の問題。

恋愛工学の答え

「尽くすな。与えるほど価値が下がる。」

非モテコミットの回避と同じ系統の教えです。

研究の答え

「与える」ことの意味は、関係が共同的か交換的かで反転する。

相手の必要に応じて与える関係(共同的)と、与えたぶんの見返りを期待する関係(交換的)を分けた実験があります。

共同的な関係では、すぐに見返りを返されると魅力がむしろ下がりました。交換的な関係では逆でした。

つまり「尽くすと損」も「尽くせば好かれる」も、どちらも単純化しすぎです。効いているのは行為の量ではなく、二人がどちらの型の関係を想定しているかのほうです。

出典:Clark, M. S., & Mills, J. (1979), JPSP, 37(1), 12–24

研究の中身

Clark, M. S., & Mills, J. (1979). Interpersonal attraction in exchange and communal relationships. Journal of Personality and Social Psychology, 37(1), 12–24.
何をしたか
相手との関係を共同的(必要に応じて与える)か交換的(見返りを期待する)に操作し、援助のあとすぐ見返りを返されたときの魅力の変化を比べた。
何が分かったか
共同的な関係では、すぐに見返りを返されると魅力が下がった。交換的な関係では逆だった。同じ行為が、関係の型によって逆の効果を持つ。
どのくらいの強さか
実験的な操作による因果の検証。

攻略

男性が読む場合

相手の内側で起きていること
同じ「与える」行為が、相手が想定している関係の型によって逆の効果を持つ。相手の必要に応じて与える関係では、すぐに見返りを返されると魅力が下がる。見返りを期待する関係では逆になる。
どう活かすか
「尽くすな」を一般則にすると、共同的な関係を望む相手に逆効果になる。型を見極めるのが先。相手が見返りを気にするかどうかが手がかりになる。
使える場面
デート代の負担を決めるとき。プレゼントを渡すか迷ったとき。相手にどこまで手を貸すか決めるとき。

女性が読む場合

相手の内側で起きていること
してもらったことをすぐ返そうとする振る舞いが、かえって距離を作る場合がある。共同的な関係では、即座の返礼が「取引にしたい」という合図として受け取られる。
どう活かすか
借りを作りたくない気持ちが、関係の型を交換的な方向に固定していないか見る。返す代わりに、必要なときに受け取る形もある。
使える場面
おごられたときの反応に迷ったとき。相手に何かしてもらったとき。関係が事務的だと感じたとき。
この機構自体に性差はほとんど報告されていません。違うのは置かれる状況と、社会的な台本のほうです。
「どう活かすか」「使える場面」はモデルから導かれる読み方であって、その手順の効果を検証した研究があるわけではありません。

議論されている点

実験室で操作された関係の型と、現実の関係の曖昧さは違います。実際には、二人が別々の型を想定していることも多い。

このモデルは「どちらの型を想定しているか」を見極める手段を教えてくれるわけではありません。診断の枠であって、手順ではない。

使っている理論

  • 共同的関係と交換的関係(社会心理学 / 対人関係の型)— 相手の必要に応じて与える関係(共同的)と、与えたぶんの見返りを期待する関係(交換的)を区別する枠組み。
  • 相互依存理論(社会心理学 / 社会的交換の系譜)— 人間関係を、得られる結果と比較水準(期待値・代替の質)の関係として記述する枠組み。
恋愛の俗説を、心理学の原典まで遡って確かめています。
根拠の強さを書けない主張は、このサイトでは扱いません。