ここまで来たから、別れられないのか
かけた時間が惜しい。この感覚には名前がついています。
戻らない費用は判断に入れるべきでないのに、人は実際には入れてしまう。これがサンクコスト効果です。ただし恋愛でこの形が働くことを直接検証した研究は少なく、関係の側は投資モデルが扱っています。
恋愛工学の答え
見極めと回転を重んじる運用です。判断の速さを価値に置いています。
研究の答え
合理的な判断では、すでに払って戻らないものは、この先どうするかの材料にしてはいけないとされます。過去は変えられないからです。
ところが実験では、戻らない費用を多く払った人ほど、割に合わなくなっても続けることを選びました。払った額そのものが判断材料になっていたわけです。
恋愛では「ここまで来たから」「何年もかけたのに」という形で現れます。ただし注意が要ります。この効果が検証されてきたのは投資や購入の判断であって、関係を続けるかどうかの判断ではありません。
関係の側を扱っているのは投資モデルです。そちらでは、投資量の多さがコミットメントを高めることが繰り返し確認されています。つまり「かけたものが判断を変える」こと自体は関係研究でも見つかっています。ただしそれが誤りなのかどうかは、また別の話です。
研究の中身
議論されている点
恋愛でこの形が働くことを直接検証した研究は多くありません。関係の側を扱っているのは投資モデルで、そちらでは投資量の多さがコミットメントを高めることが繰り返し確認されています。
ただし「かけたものが判断を変える」ことと「それが誤りである」ことは別です。積み上げたものに実際の価値がある場合、それを考慮するのは不合理ではありません。サンクコストという言葉を、関係を切る判断の正当化に使うのは、この知見の範囲を超えています。
使っている理論
参照している研究
- Rusbult, C. E. (1980). Commitment and satisfaction in romantic associations: A test of the investment model. Journal of Experimental Social Psychology, 16(2), 172–186.
- Johnson, D. J., & Rusbult, C. E. (1989). Resisting temptation: Devaluation of alternative partners as a means of maintaining commitment in close relationships. Journal of Personality and Social Psychology, 57(6), 967–980.
- Le, B., & Agnew, C. R. (2003). Commitment and its theorized determinants: A meta-analysis of the Investment Model. Personal Relationships, 10(1), 37–57.
- Thibaut, J. W., & Kelley, H. H. (1959). The Social Psychology of Groups. Wiley.
- Arkes, H. R., & Blumer, C. (1985). The psychology of sunk cost. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 35(1), 124–140.