相互依存理論
理論書・1959年・Wiley
この研究は何をしたか
人間関係を、得られる結果と比較水準(期待値・代替の質)の関係として記述する枠組みを提示した。
何が分かったか
投資モデルの「満足度」と「代替の質」はここから直接引き継がれている。
読むときの注意
理論的枠組みであり、特定の効果量を示すものではない。
この研究が根拠になっている悩み(13件)
- 「好き避け」は本当にあるのか 強い
「近づきたい」と「傷つきたくない」が競合し、自己防衛が勝った状態として説明できる。 - 好意がバレると不利になるのか そこそこ
原則は逆。好意が伝わると好意が返りやすい。ただし相手の自己評価によって反転する。 - 恋人がいるのに、他の人が気になる 強い
「他が気になる」は、コミットメントの構成要素が動いたシグナルとして説明できる。 - 返信が遅いのは脈なしか 根拠なし
返信速度と好意の強さを結びつけた研究は見当たらない。 - 尽くすと重いと思われるのか そこそこ
「与える」ことの意味は、関係が共同的か交換的かで反転する。 - 相手を美化するのは危険か そこそこ
パートナーを本人の自己評価より良く見ている人のほうが、関係に満足していた。しかも理想化された側の自己評価も上がっていた。 - 我慢は関係にいいのか そこそこ
きつい態度に同じ態度で返さず、落ち着いて応じる人ほど関係の質が高い。ただし測っているのは言い返さない行動であって、不満を飲み込むことではない。 - 愛着スタイルで、恋愛のしかたは決まるのか そこそこ
不安と回避という2つの連続した物差しで測るのが標準。タイプの箱ではない。 - なぜ「追う側」と「逃げる側」に分かれるのか 弱い
不安が高い側は近づこうとし、回避が高い側は距離を取る。この組み合わせで循環が起きやすいという報告がある。 - 「運命の人」がいると思うと、どうなるのか そこそこ
関係についての信じ方(運命か、成長か)が、問題が起きたときの行動と結びついている。 - ここまで来たから、別れられないのか そこそこ
戻らない投資の大きさが、続けるかどうかの判断に入り込む。 - 復縁したあと、うまくいくのか そこそこ
戻った関係は平均して質が低く、回数で悪化する。分けているのは戻る理由と、満足度・代替の質。 - 手をかけた関係ほど、価値が高く見えるのか 強い
自分で手をかけたものの価値評価は上がる。ただし完成した場合に限られる。
関係する理論
- リスク調整モデル(社会心理学 / 対人関係研究(relationship science))
人は誰かに近づくとき、「つながりたい」という接近の目標と「拒絶されて傷つきたくない」という自己防衛の目標を同時に走らせている。どちらが勝つかを決めるのは、「相手が自分をどう見ているか」の推定。ここが低く見積もられていると、認知・感情・行動の3つのif-thenルールがすべて防衛側に倒れる。 - 投資モデル(社会心理学 / 相互依存理論の系譜)
関係を続ける力(コミットメント)は、満足度 + 投資量 − 代替の質 で決まる。コミットメントが高い人は、他の選択肢を無意識に低く評価する(代替の切り下げ)。 - 相互依存理論(社会心理学 / 社会的交換の系譜)
人間関係を、得られる結果と比較水準(期待値・代替の質)の関係として記述する枠組み。
同じ話題で参照している研究
- リスク調整モデル(レビュー・2006)
相手の好意への確信が高い人は、脅威になりうる出来事を関係の確認に使う。確信が低い人は、同じ出来事を愛情が弱まった証拠として解釈し、先に距離を取る。 - 拒絶感受性(実験(4研究)・1996)
拒絶感受性が高い人ほど、そっけない対応などの曖昧な行動に意図的な拒絶を読み取った。本人もパートナーも関係に不満を抱えやすい。 - 拒絶感受性メタ分析(メタ分析・2023)
拒絶感受性が高い人ほど、自己評価する魅力度が低く、嫉妬が強く、パートナーからの愛情表現を少なく知覚する傾向があった。 - 投資モデルの原典(実証研究・1980)
関係を続ける力は、満足度だけでは決まらない。積み上げた投資と、他の選択肢の魅力の両方が効く。 - 代替の切り下げ(実験・実証・1989)
コミットメントが高いほど、代替となりうる相手を実際より低く評価した。関係を守る自動的な維持メカニズム。 - 投資モデルのメタ分析(メタ分析・2003)
満足度・投資量・代替の質はいずれもコミットメントと有意に関連し、合わせて分散のおよそ3分の2を説明した。もっとも強いのは満足度。
書誌情報
Thibaut, J. W., & Kelley, H. H. (1959). The Social Psychology of Groups. Wiley.