悩み 56

手に入りにくいほど、欲しくなるのか

希少性の原理。ただし実験で測られたのは、人ではなく食べ物の評価です。

結論から言うと

数が少ないものほど高く評価され、もともと多かったものが減った場合はさらに高く評価されました。ただし扱われたのは物の価値であって、人への魅力ではありません。

恋愛工学の答え

「簡単に手に入ると思わせるな。」

相手に余裕を見せる運用です。希少性の原理が根拠として引かれます。

研究の答え

手に入りにくいものは価値が高く評価される。人に当てはまるかは検証されていない。

同じ品物を、数が少ない状態と多い状態で見せて評価させた実験があります。数が少ないほうが高く評価されました。 さらに、もともと多かったものが途中で減った場合には、もっと高く評価されています。

ここから「手に入りにくいほど欲しくなる」という主張が広まりました。恋愛では、返信を遅らせる、予定を埋まっているように見せる、といった駆け引きの根拠として引かれます。

ただし正確に言うと、この実験が測ったのは食べ物の評価です。 人への魅力ではありません。

人に適用したときに同じことが起きるかは、別に検証が要ります。そして相手を意図的に手に入りにくくする行動が同じ結果を生むという裏づけは、この研究にはありません。

出典:Worchel, Lee & Adewole (1975)

研究の中身

Worchel, S., Lee, J., & Adewole, A. (1975). Effects of supply and demand on ratings of object value. Journal of Personality and Social Psychology, 32(5), 906–914.
何をしたか
同じ品物を、数が少ない状態と多い状態で提示し、評価がどう変わるかを調べた。途中で数が減った場合も試している。
何が分かったか
数が少ないほうが高く評価された。もともと多かったものが減った場合は、さらに高く評価された。
どのくらいの強さか
扱ったのは食べ物の評価。

議論されている点

この実験が測ったのは物の価値であって、人への魅力ではありません。 恋愛で駆け引きの根拠として引かれますが、人に適用したときに同じことが起きるかは別の検証が要ります。

さらに実務上の問題があります。手に入りにくさを演出する行動は、相手から見れば単に関心が低い行動と区別がつきません。実験では品物の数が客観的に示されていましたが、人の場合その情報は伝わりません。

使っている理論

  • 希少性の原理(社会心理学 / 価値判断)— 手に入りにくいものほど価値が高く見える。もともと多かったものが減った場合は、さらに高く見える。
  • ドア・イン・ザ・フェイス(社会心理学 / 承諾誘導研究)— 断られる前提の大きな頼みを先にして、そのあと小さく下げると、応じる割合が上がる。
  • 代替の切り下げ(社会心理学 / 関係維持)— コミットメントが高い人は、代替となりうる相手を実際より低く評価する。
恋愛の俗説を、心理学の原典まで遡って確かめています。
根拠の強さを書けない主張は、このサイトでは扱いません。