悩み 55
わざと大きく頼んでから譲ると、通るのか
ドア・イン・ザ・フェイス。働く場面がかなり狭い技法です。
結論から言うと
断られる前提の大きな頼みを先にして、そのあと小さく下げると応じる割合が上がります。ただし同じ相手が続けて頼む場合にしか働かず、間が空くと消えます。
恋愛工学の答え
「大きく要求してから譲歩して見せろ。」
交渉の枠組みを持ち込む運用です。この技法が根拠として引かれます。
研究の答え
大きな要求から下げると、最初から小さく頼むより応じられやすい。ただし条件が狭い。
まず断られるほど大きな頼みをし、そのあと小さな頼みに下げる。この手順で、最初から小さく頼んだ場合より応じる割合が高くなりました。
説明は互いの譲歩です。相手が要求を下げてくれたのだから、こちらも応じようという形で、返報性の一種として位置づけられています。
ここで重要なのは適用範囲です。この効果は、同じ相手が続けて頼む場合にしか働きません。間が空いたり、別の人が頼んだりすると消えます。譲歩として受け取られる文脈が要る、ということです。
恋愛の文脈で引かれることがありますが、検証されたのは見知らぬ相手への依頼場面です。
出典:Cialdini, Vincent, Lewis, Catalan, Wheeler & Darby (1975)
研究の中身
Cialdini, R. B., Vincent, J. E., Lewis, S. K., Catalan, J., Wheeler, D., & Darby, B. L. (1975). Reciprocal concessions procedure for inducing compliance: The door-in-the-face technique. Journal of Personality and Social Psychology, 31(2), 206–215.
何をしたか
断られるほど大きな頼みを先にして、そのあと小さな頼みに下げた場合と、最初から小さく頼んだ場合で、応じる割合を比べた。3つの研究から成る。
何が分かったか
大きな頼みから下げた場合のほうが、応じる割合が高かった。相手が譲ったのだから自分も譲る、という互いの譲歩として説明された。
どのくらいの強さか
間を空けた場合や別人が頼んだ場合には効果が消えることも確認されている。
議論されている点
働く条件がかなり狭い技法です。 同じ相手が続けて頼む場合に限られ、間が空いたり別人が頼んだりすると消えます。譲歩として受け取られる文脈が必要だということです。
恋愛の文脈で引かれることがありますが、検証されたのは見知らぬ相手への依頼場面で、関係の中での駆け引きに一般化できる根拠はありません。
使っている理論
- ドア・イン・ザ・フェイス(社会心理学 / 承諾誘導研究)— 断られる前提の大きな頼みを先にして、そのあと小さく下げると、応じる割合が上がる。
- 希少性の原理(社会心理学 / 価値判断)— 手に入りにくいものほど価値が高く見える。もともと多かったものが減った場合は、さらに高く見える。
参照している研究
- Le, B., & Agnew, C. R. (2003). Commitment and its theorized determinants: A meta-analysis of the Investment Model. Personal Relationships, 10(1), 37–57.
- Le, B., Dove, N. L., Agnew, C. R., Korn, M. S., & Mutso, A. A. (2010). Predicting nonmarital romantic relationship dissolution: A meta-analytic synthesis. Personal Relationships, 17(3), 377–390.
- Cialdini, R. B., Vincent, J. E., Lewis, S. K., Catalan, J., Wheeler, D., & Darby, B. L. (1975). Reciprocal concessions procedure for inducing compliance: The door-in-the-face technique. Journal of Personality and Social Psychology, 31(2), 206–215.
- Worchel, S., Lee, J., & Adewole, A. (1975). Effects of supply and demand on ratings of object value. Journal of Personality and Social Psychology, 32(5), 906–914.