悩み 12

「36の質問」で人は恋に落ちるのか

36個の質問に答えると恋に落ちる、という有名な実験。

結論から言うと

あの実験が示したのは「初対面でも親密になれる」まで。恋に落ちたかは測っていない。効いているのは、順番に、お互い同じ深さで話すこと。

恋愛工学の答え

「深い話をさせれば距離は縮まる。」

自己開示を意図的に設計する技法。デートの設計論としてよく使われます。

研究の答え

段階的で相互的な自己開示は、初対面でも親密さを高める。ただし恋に落ちることを示した研究ではない。

初対面の2人に、段階的に深くなる質問を交互に答えさせる45分の手続きを行い、雑談条件と比べた研究があります。相互的な自己開示の条件で、親密さが高くなりました。

ただし測ったのは手続き直後の親密さです。恋愛感情が生まれることも、それが続くことも、この研究は示していません。

「36の質問で恋に落ちる」という広まり方は、結果を一段階拡張したものです。

出典:Aron, A., Melinat, E., Aron, E. N., Vallone, R. D., & Bator, R. J. (1997), PSPB, 23(4), 363–377

研究の中身

Aron, A., Melinat, E., Aron, E. N., Vallone, R. D., & Bator, R. J. (1997). The experimental generation of interpersonal closeness: A procedure and some preliminary findings. Personality and Social Psychology Bulletin, 23(4), 363–377.
何をしたか
初対面の2人に、段階的に深くなる質問を交互に答えさせる45分の手続きを行い、雑談条件と親密さを比べた。
何が分かったか
相互的で段階的な自己開示の条件で、初対面の相手との親密さが有意に高くなった。
どのくらいの強さか
予備的知見として報告されている。手続きの効果を示したもの。

攻略

男性が読む場合

相手の内側で起きていること
段階的で相互的な自己開示は、初対面でも親密さを高める。ただし研究が測ったのは手続き直後の親密さであって、恋愛感情ではない。相手の中で上がっているのは「近さ」の感覚。
どう活かすか
深い話に持ち込む設計は研究と整合する。ただし相互的であることが条件で、一方的に聞き出す形では成立しない。自分も同じ深さで開示する。
使える場面
2回目・3回目のデートで話題が浅いままのとき。相手の内面が見えないとき。オンラインから対面に移すとき。

女性が読む場合

相手の内側で起きていること
短時間で距離が縮まったと感じたとき、それは手続きの効果である可能性がある。感じたことが偽物という意味ではなく、条件によって作れるという意味。
どう活かすか
急速に縮まった距離を、関係の強さの証拠として扱わない。同じ深さの開示が相手からも返ってきているかを見る。一方的に聞き出されている場合は別の話。
使える場面
初対面で深い話になったとき。急に距離が縮まったと感じたとき。相手が質問ばかりしてくるとき。
この機構自体に性差はほとんど報告されていません。違うのは置かれる状況と、社会的な台本のほうです。
「どう活かすか」「使える場面」はモデルから導かれる読み方であって、その手順の効果を検証した研究があるわけではありません。

議論されている点

この研究が測ったのは、手続き直後の主観的な親密さです。恋愛感情が生まれたかも、それが続いたかも測っていません。

「36の質問で恋に落ちる」という広まり方は、親密さ→恋愛感情という一段階の飛躍を含んでいます。この飛躍を埋めた研究は見当たりません。

使っている理論

  • 自己開示の相互性(社会心理学 / 親密性研究)— 段階的に深まる相互的な打ち明け合いが、親密さを高める。
  • 所属欲求(社会心理学 / 動機づけ研究)— 人は継続的で良質な対人関係を求める基本的な動機を持つ、という仮説。
恋愛の俗説を、心理学の原典まで遡って確かめています。
根拠の強さを書けない主張は、このサイトでは扱いません。