理想と実際のズレ
実証研究・2008年・JPSP
この研究は何をしたか
スピードデーティングを用い、事前に申告した「理想の条件」が、実際に誰に惹かれるかを予測するかを調べた。
何が分かったか
事前に申告した理想は、実際の魅力の判断をほとんど予測しなかった。申告された性差は、実際の選択には現れにくい。
読むときの注意
実際の出会いの場面での知見。長期の関係形成にそのまま当てはまるとは限らない。
この研究が根拠になっている悩み(9件)
- 会う回数を増やせば好かれるのか 強い
単純接触効果はしっかりしている。ただし上限があり、増やし続けると頭打ちか下降に転じる。退屈しやすい人には出にくい。 - モテは一本の序列で決まるのか 弱い
人が惹かれる理由は複数あって、1本の順位にまとめる根拠はない。 - 相性のいい相手は事前に分かるのか 弱い
相手の属性から相性を予測する試みは、うまくいっていない。効いていたのは「その関係をどう感じているか」のほう。 - 理想のタイプを決めておくべきか 弱い
事前に申告した理想は、実際の魅力判断をほとんど予測しない。 - 「男が追う、女が待つ」はどこから来たのか そこそこ
行動の男女差の多くは、それぞれが置かれた社会的な役割と、そこで期待される振る舞いから説明できる。 - 男女は根本的に違うのか 弱い
平均の差はあるが小さく、国による差のほうが大きい。脳の性差を根拠にした説明は裏づけが弱い。 - 失恋のつらさは、思っているほど長く続かない 強い
悪い出来事の影響が続く期間を、人は一貫して長く見積もる。 - 言葉づかいが揃うと、関係は続きやすいのか そこそこ
機能語の使い方の一致度が、関係の始まりと継続と関連する。 - 「37%を見送ってから決めろ」は正しいのか 弱い
37%という数字は厳密な条件下での最適解であり、恋愛はその条件を満たしていない。
関係する理論
- 単純接触効果(社会心理学と認知心理学の境界 / 感情研究)
繰り返し接触するだけで、対象への好意度が上がる。 - 配偶者選好(進化心理学 / その批判的検証)
パートナーに求める条件と、その性差をめぐる研究群。 - 関係は予測できるのか(関係科学 / 方法論)
43の縦断研究を機械学習で統合した結果、関係の質をもっとも強く予測したのは、相手の属性ではなく回答者自身が関係をどう感じているか(コミットメント・感謝・満足)だった。 - 言葉づかいの同調(計算言語学 / 関係研究への応用)
助詞や代名詞といった機能語の使い方がどれくらい揃っているかが、関係の始まりと続きやすさと関連する。
同じ話題で参照している研究
- 単純接触効果の原典(実験・1968)
接触の反復それ自体が好意を生む。理由づけや報酬を必要としない。 - 単純接触のメタ分析(メタ分析・1989)
効果量 r = .26。研究全体で、提示時間が短いほど効果が大きかった。意識できないほど短い(閾下の)提示のほうが、はっきり認識できる提示より効果がかなり強かった(Bornstein ら, 1990 の要約による)。 - 情動の二要因理論(実験・1962)
同じ興奮でも、それをどう解釈するかで感じる情動が変わる。吊り橋実験はこの理論の応用として設計された。 - 類似性のメタ分析(メタ分析・2008)
実際の類似性 r = .47、知覚された類似性 r = .39。ただし実際の類似性は既存の関係では有意にならず、知覚された類似性は全段階で効いた。 - 離婚予測の交差検証問題(方法論批判・2001)
交差検証を行うと、精度と予測的中率が大きく低下する。報告されていた80〜90%台は、結果を知った後の当てはめによる部分が大きい。 - 近接性と友人形成(現地調査・1950)
物理的な近さ(同じ階、階段の近く)が、友人関係の形成をよく予測した。
書誌情報
Eastwick, P. W., & Finkel, E. J. (2008). Sex differences in mate preferences revisited: Do people know what they initially desire in a romantic partner? Journal of Personality and Social Psychology, 94(2), 245–264.