なぜ「追う側」と「逃げる側」に分かれるのか
追えば逃げる。引けば来る。この繰り返しに、名前は付いている。
不安が高い人と回避が高い人が組むと、追う・逃げるの循環が起きやすい、という関連が報告されている。ただし「だから相性が悪い」とまでは示されていない。
恋愛工学の答え
位置取りの問題として語られます。追う側になったら降りろ、という運用です。
研究の答え
不安の目盛りが高い人は、距離ができると近づいて確かめようとします。回避の目盛りが高い人は、近づかれると距離を取ろうとします。この二つが噛み合うと、追う・逃げるが自動的に回りはじめます。
ただし注意が必要です。この組み合わせが必ず不幸になる、という結果ではありません。組み合わせよりも、その循環に気づいて止められるかどうかのほうが効いている、という見方もあります。
「追った時点で負け」は、この循環の片側だけを切り取った言い方です。
74研究・のべ14,255人をまとめたメタ分析では、追う・逃げるの型と、関係の結果との関連は r = .423(中くらい)でした。個人・関係・やりとりの結果をまとめた全体では r = .360 です。妻が求めて夫が引く型(.380)と、夫が求めて妻が引く型(.392)で、強さはほとんど変わりません(Schrodt ら 2014)。関連をまとめた研究なので、どちらが先かは決まりません。
研究の中身
攻略
男性が読む場合
女性が読む場合
「どう活かすか」「使える場面」はモデルから導かれる読み方であって、その手順の効果を検証した研究があるわけではありません。
議論されている点
「この組み合わせは相性が悪い」とまでは示されていません。 循環が起きやすい、という関連までです。
そして恋愛工学が言う「追った時点で負け」は、循環の片側だけを取り出した処方です。追うのをやめると回避側の距離取りも止まる、という保証はありません。
また、どちらの役に回るかは固定ではなく、相手によって入れ替わることがあります。
使っている理論
- 成人の愛着(発達心理学 / 対人関係研究への応用)— 近くにいる相手との関係で、人が「近づくこと」と「傷つかないこと」をどう調整するかの枠組み。現在は「見捨てられ不安」と「親密さの回避」という2つの連続した次元で測る。
- リスク調整モデル(社会心理学 / 対人関係研究(relationship science))— 人は誰かに近づくとき、「つながりたい」という接近の目標と「拒絶されて傷つきたくない」という自己防衛の目標を同時に走らせている。どちらが勝つかを決めるのは、「相手が自分をどう見ているか」の推定。ここが低く見積もられていると、認知・感情・行動の3つのif-thenルールがすべて防衛側に倒れる。
参照している研究
- Murray, S. L., Holmes, J. G., & Collins, N. L. (2006). Optimizing assurance: The risk regulation system in relationships. Psychological Bulletin, 132(5), 641–666.
- Thibaut, J. W., & Kelley, H. H. (1959). The Social Psychology of Groups. Wiley.
- Hazan, C., & Shaver, P. (1987). Romantic love conceptualized as an attachment process. Journal of Personality and Social Psychology, 52(3), 511–524.
- Bartholomew, K., & Horowitz, L. M. (1991). Attachment styles among young adults: A test of a four-category model. Journal of Personality and Social Psychology, 61(2), 226–244.
- Murray, S. L., Holmes, J. G., & Griffin, D. W. (1996). The benefits of positive illusions: Idealization and the construction of satisfaction in close relationships. Journal of Personality and Social Psychology, 70(1), 79–98.
- Collins, N. L. (1996). Working models of attachment: Implications for explanation, emotion, and behavior. Journal of Personality and Social Psychology, 71(4), 810–832.
- Schrodt, P., Witt, P. L., & Shimkowski, J. R. (2014). A meta-analytical review of the demand/withdraw pattern of interaction and its associations with individual, relational, and communicative outcomes. Communication Monographs, 81(1), 28–58.
- Overall, N. C., Simpson, J. A., & Struthers, H. (2013). Buffering attachment-related avoidance: Softening emotional and behavioral defenses during conflict discussions. Journal of Personality and Social Psychology, 104(5), 854–871.