悩み 39
なぜ「追う側」と「逃げる側」に分かれるのか
追えば逃げる。引けば来る。この繰り返しに、名前は付いている。
結論から言うと
不安が高い人と回避が高い人が組むと、追う・逃げるの循環が起きやすい、という関連が報告されている。ただし「だから相性が悪い」とまでは示されていない。
恋愛工学の答え
「追わせる側に回れ。追った時点で負けが決まる。」
位置取りの問題として語られます。追う側になったら降りろ、という運用です。
研究の答え
不安が高い側は近づこうとし、回避が高い側は距離を取る。この組み合わせで循環が起きやすいという報告がある。
不安の目盛りが高い人は、距離ができると近づいて確かめようとします。回避の目盛りが高い人は、近づかれると距離を取ろうとします。**この二つが噛み合うと、追う・逃げるが自動的に回りはじめます**。
ただし注意が必要です。この組み合わせが必ず不幸になる、という結果ではありません。組み合わせよりも、**その循環に気づいて止められるかどうか**のほうが効いている、という見方もあります。
「追った時点で負け」は、この循環の片側だけを切り取った言い方です。
出典:不安と回避の組み合わせに関する関係研究
研究の中身
不安と回避の組み合わせが関係の相互作用に与える影響を扱った研究群
何をしたか
カップル双方の愛着の目盛りを測り、対立場面での振る舞いや関係の満足度と対応させる。
何が分かったか
不安が高い側は接近と確認を、回避が高い側は距離取りを選びやすい。この組み合わせでは、対立場面で追う・逃げるの型が出やすい。
どのくらいの強さか
カップル単位のデータを扱う研究。組み合わせの効果は、それぞれ単独の効果より小さいことが多い。
攻略
男性が読む場合
相手の内側で起きていること
追えば逃げるとき、相手は駆け引きをしているのではなく、近づかれたことで回避の目盛りが上がっている可能性がある。あなたの熱量そのものが引き金になっていることがある。
どう活かすか
追うのをやめる、が唯一の手ではない。相手が「決めなくていい」状態を作るほうが、循環を止める方向としてはモデルと整合する。曖昧な誘い方をやめ、断っても関係が続く形にする。
使える場面
連絡を増やすほど返信が減るとき。会おうと言うたびに予定が合わなくなるとき。
女性が読む場合
相手の内側で起きていること
相手が引いたとき、追いたくなるのは不安の目盛りが上がっているから。追う自分を責める必要はないが、追うほど相手の回避が上がる、という循環は起こりうる。
どう活かすか
確かめたくなった時間の一部を、確かめる行動ではなく記録に振り替える。相手が近づいてくる場面がどこかを探す。
使える場面
既読がつかないまま何度も送ってしまうとき。相手の予定を細かく知りたくなるとき。
この機構自体に性差はほとんど報告されていません。違うのは置かれる状況と、社会的な台本のほうです。
「どう活かすか」「使える場面」はモデルから導かれる読み方であって、その手順の効果を検証した研究があるわけではありません。
「どう活かすか」「使える場面」はモデルから導かれる読み方であって、その手順の効果を検証した研究があるわけではありません。
議論されている点
**「この組み合わせは相性が悪い」とまでは示されていません。** 循環が起きやすい、という関連までです。
そして恋愛工学が言う「追った時点で負け」は、循環の片側だけを取り出した処方です。追うのをやめると回避側の距離取りも止まる、という保証はありません。
また、どちらの役に回るかは固定ではなく、相手によって入れ替わることがあります。
使っている理論
- 成人の愛着(発達心理学 / 対人関係研究への応用)— 近くにいる相手との関係で、人が「近づくこと」と「傷つかないこと」をどう調整するかの枠組み。現在は「見捨てられ不安」と「親密さの回避」という2つの連続した次元で測る。
- リスク調整モデル(社会心理学 / 対人関係研究(relationship science))— 人は誰かに近づくとき、「つながりたい」という接近の目標と「拒絶されて傷つきたくない」という自己防衛の目標を同時に走らせている。どちらが勝つかを決めるのは、「相手が自分をどう見ているか」の推定。ここが低く見積もられていると、認知・感情・行動の3つのif-thenルールがすべて防衛側に倒れる。
参照している研究
- Murray, S. L., Holmes, J. G., & Collins, N. L. (2006). Optimizing assurance: The risk regulation system in relationships. Psychological Bulletin, 132(5), 641–666.
- Thibaut, J. W., & Kelley, H. H. (1959). The Social Psychology of Groups. Wiley.
- Hazan, C., & Shaver, P. (1987). Romantic love conceptualized as an attachment process. Journal of Personality and Social Psychology, 52(3), 511–524.
- Bartholomew, K., & Horowitz, L. M. (1991). Attachment styles among young adults: A test of a four-category model. Journal of Personality and Social Psychology, 61(2), 226–244.
- Collins, N. L., & Miller, L. C. (1994). Self-disclosure and liking: A meta-analytic review. Psychological Bulletin, 116(3), 457–475.
- Murray, S. L., Holmes, J. G., & Griffin, D. W. (1996). The benefits of positive illusions: Idealization and the construction of satisfaction in close relationships. Journal of Personality and Social Psychology, 70(1), 79–98.