リスク調整モデル
レビュー・2006年・Psychological Bulletin
この研究は何をしたか
対人関係研究を横断して統合し、人が「近づくこと」と「自分を守ること」をどう調整しているかを、認知・感情・行動の3つのif-thenルールとして定式化した理論レビュー。
何が分かったか
相手の好意への確信が高い人は、脅威になりうる出来事を関係の確認に使う。確信が低い人は、同じ出来事を愛情が弱まった証拠として解釈し、先に距離を取る。
読むときの注意
単一の実験ではないため、この論文自体が何かを実証したわけではない。裏づけは統合の材料になった個々の研究の側にある。
この研究が根拠になっている悩み(7件)
- 「好き避け」は本当にあるのか 強い
「近づきたい」と「傷つきたくない」が競合し、自己防衛が勝った状態として説明できる。 - 好意がバレると不利になるのか そこそこ
原則は逆。好意が伝わると好意が返りやすい。ただし相手の自己評価によって反転する。 - 返信が遅いのは脈なしか 根拠なし
返信速度と好意の強さを結びつけた研究は見当たらない。 - 相手を美化するのは危険か そこそこ
パートナーを本人の自己評価より良く見ている人のほうが、関係に満足していた。しかも理想化された側の自己評価も上がっていた。 - 自信は、本当に効くのか そこそこ
自己評価は関係の維持に効く。ただし「フリ」で他の選択肢できる証拠はない。 - 愛着スタイルで、恋愛のしかたは決まるのか そこそこ
不安と回避という2つの連続した物差しで測るのが標準。タイプの箱ではない。 - なぜ「追う側」と「逃げる側」に分かれるのか 弱い
不安が高い側は近づこうとし、回避が高い側は距離を取る。この組み合わせで循環が起きやすいという報告がある。
関係する理論
同じ話題で参照している研究
- 拒絶感受性(実験(4研究)・1996)
拒絶感受性が高い人ほど、そっけない対応などの曖昧な行動に意図的な拒絶を読み取った。本人もパートナーも関係に不満を抱えやすい。 - 拒絶感受性メタ分析(メタ分析・2023)
拒絶感受性が高い人ほど、自己評価する魅力度が低く、嫉妬が強く、パートナーからの愛情表現を少なく知覚する傾向があった。 - 相互依存理論(理論書・1959)
投資モデルの「満足度」と「代替の質」はここから直接引き継がれている。 - 恋愛への愛着理論の適用(実証研究・1987)
恋愛関係にも、安定・不安・回避に対応するパターンが観察されることを示した。以後の成人愛着研究の出発点。 - 認知-感情処理システム(理論・1995)
拒絶感受性のような構成概念は、この枠組みの中に位置づけられる。「性格が弱い」ではなく、特定の状況で起動する処理の癖。 - 名字の五十音順で席が近い人ほど、友人に選ばれていた(現地調査(44人)・1974)
近さが友人の選択に与える効果は、それまでの研究で好意の決め手とされてきた多くの特徴の効果より強かった。 著者は名字の順番を「控えめな」近さの指標だとしている(実際の近さより粗い測り方なので、効果を小さめに見積もる方向)。
書誌情報
Murray, S. L., Holmes, J. G., & Collins, N. L. (2006). Optimizing assurance: The risk regulation system in relationships. Psychological Bulletin, 132(5), 641–666.