リスク調整モデル
Risk Regulation Model · 社会心理学 / 対人関係研究(relationship science)
何を言っている理論か
人は誰かに近づくとき、「つながりたい」という接近の目標と「拒絶されて傷つきたくない」という自己防衛の目標を同時に走らせている。どちらが勝つかを決めるのは、「相手が自分をどう見ているか」の推定。ここが低く見積もられていると、認知・感情・行動の3つのif-thenルールがすべて防衛側に倒れる。
心理学のどこにあるか
ボウルビィの愛着理論と、Thibaut & Kelley の相互依存理論という2つの流れが、1990年代以降の「自己評価と関係維持」研究で合流した地点にある。Murray は自己評価の低い人が関係の中で何をするかを一貫して研究してきた研究者で、このレビューはその蓄積の総まとめにあたる。
研究の性質と注意
これは単一の実験ではなく、多数の研究をまとめた理論的整理です。だから「この論文が実験で証明した」とは書けません。裏づけは、統合の材料になった個々の研究の側にあります。
この理論の主要な研究(3本)
- リスク調整モデル(レビュー・2006)
相手の好意への確信が高い人は、脅威になりうる出来事を関係の確認に使う。確信が低い人は、同じ出来事を愛情が弱まった証拠として解釈し、先に距離を取る。
Murray, S. L., Holmes, J. G., & Collins, N. L. (2006). Optimizing assurance: The risk regulation system in relationships. Psychological Bulletin, 132(5), 641–666. - 相互依存理論(理論書・1959)
投資モデルの「満足度」と「代替の質」はここから直接引き継がれている。
Thibaut, J. W., & Kelley, H. H. (1959). The Social Psychology of Groups. Wiley. - 恋愛への愛着理論の適用(実証研究・1987)
恋愛関係にも、安定・不安・回避に対応するパターンが観察されることを示した。以後の成人愛着研究の出発点。
Hazan, C., & Shaver, P. (1987). Romantic love conceptualized as an attachment process. Journal of Personality and Social Psychology, 52(3), 511–524.
この理論を使っている悩み(7件)
- 「好き避け」は本当にあるのか 強い
「近づきたい」と「傷つきたくない」が競合し、自己防衛が勝った状態として説明できる。 - 好意がバレると不利になるのか そこそこ
原則は逆。好意が伝わると好意が返りやすい。ただし相手の自己評価によって反転する。 - 自信は、本当に効くのか そこそこ
自己評価は関係の維持に効く。ただし「フリ」で他の選択肢できる証拠はない。 - 返信が遅いのは脈なしか 根拠なし
返信速度と好意の強さを結びつけた研究は見当たらない。 - 相手を美化するのは危険か そこそこ
パートナーを本人の自己評価より良く見ている人のほうが、関係に満足していた。しかも理想化された側の自己評価も上がっていた。 - 愛着スタイルで、恋愛のしかたは決まるのか そこそこ
不安と回避という2つの連続した物差しで測るのが標準。タイプの箱ではない。 - なぜ「追う側」と「逃げる側」に分かれるのか 弱い
不安が高い側は近づこうとし、回避が高い側は距離を取る。この組み合わせで循環が起きやすいという報告がある。