悩み 37

愛着スタイルで、恋愛のしかたは決まるのか

「私は回避型」「彼は不安型」。SNSでいちばん見かける言葉。

結論から言うと

傾向としては本物。ただし4タイプに分かれるのではなく、不安と回避という2つの物差しの目盛りとして測られている。「私は回避型」という言い方自体が、研究の形とずれている。

恋愛工学の答え

「相手のタイプを見極めて、それに合わせた戦術を取れ。」

タイプ分けして攻略法を変える、という運用で語られます。診断コンテンツの多くもこの形です。

研究の答え

不安と回避という2つの連続した物差しで測るのが標準。タイプの箱ではない。

大人の愛着は、Hazan & Shaver (1987) が「恋愛は愛着のプロセスとして記述できる」と提案したところから始まりました。

重要なのは測り方です。現在の標準的な尺度は、**「見捨てられ不安」と「親密さの回避」という2つの連続した次元**で測ります。4タイプは、この2軸を高低で切って便宜的に名前を付けたものです。

つまり「回避型か、そうでないか」ではなく、「回避の目盛りがどのあたりか」が実態です。診断で1つのタイプに割り当てられると、この連続性が消えます。

出典:Hazan & Shaver (1987) / Brennan, Clark & Shaver (1998) の ECR 尺度

研究の中身

Hazan, C., & Shaver, P. (1987). Romantic love conceptualized as an attachment process. Journal of Personality and Social Psychology, 52(3), 511–524.
何をしたか
乳児と養育者の間で記述されていた愛着の枠組みを、大人の恋愛関係に当てはめられるかを検討した。新聞調査と学生調査の二段構えで、恋愛経験のパターンを愛着の3分類と対応させた。
何が分かったか
恋愛関係の経験のしかたが、愛着の分類と対応する形で分布した。安定・不安・回避のそれぞれで、関係の続き方や相手の見方が違っていた。
どのくらいの強さか
その後この枠組みは大量に追試され、測定尺度も改良された。現在の標準は Brennan, Clark & Shaver (1998) の ECR で、2つの連続次元として測る。

攻略

男性が読む場合

相手の内側で起きていること
相手を「回避型だから」と決めると、目盛りが動く場面が見えなくなる。同じ人でも、安心できる相手や状況では回避の出方が下がる。今そう見えているのは、今の状態であって、その人の設計ではない。
どう活かすか
タイプ分けして戦術を変えるのではなく、目盛りが上がる場面と下がる場面を分けて見る。相手が距離を取ったとき、直前に何があったかを一度だけ振り返る。
使える場面
相手の態度が日によって大きく振れるとき。二人のときと複数人のときで距離感が変わるとき。

女性が読む場合

相手の内側で起きていること
相手が距離を取ったとき、「回避型だから無理」と結論を出すと、そこで観察が止まる。回避の目盛りは相手や場面で変わるので、いつも同じとは限らない。
どう活かすか
診断結果を相手に当てはめて終わりにせず、どんなときに近づき、どんなときに引くかを場面ごとに見る。
使える場面
自分から診断を勧めたくなったとき。相手の行動をタイプで説明したくなったとき。
この機構自体に性差はほとんど報告されていません。違うのは置かれる状況と、社会的な台本のほうです。
「どう活かすか」「使える場面」はモデルから導かれる読み方であって、その手順の効果を検証した研究があるわけではありません。

議論されている点

**4タイプという見せ方が、研究の形から離れています。** 現在の標準的な測り方は「見捨てられ不安」「親密さの回避」という2つの連続した目盛りで、タイプはそれを高低で切っただけの便宜的なものです。

SNSの診断コンテンツは、この連続量を1つの箱に押し込めます。そこで失われるのは、目盛りの位置と、その位置が動きうるという情報です。

また、自己申告の尺度である以上、自分をどう見ているかが混ざります。

使っている理論

  • 成人の愛着(発達心理学 / 対人関係研究への応用)— 近くにいる相手との関係で、人が「近づくこと」と「傷つかないこと」をどう調整するかの枠組み。現在は「見捨てられ不安」と「親密さの回避」という2つの連続した次元で測る。
  • リスク調整モデル(社会心理学 / 対人関係研究(relationship science))— 人は誰かに近づくとき、「つながりたい」という接近の目標と「拒絶されて傷つきたくない」という自己防衛の目標を同時に走らせている。どちらが勝つかを決めるのは、「相手が自分をどう見ているか」の推定。ここが低く見積もられていると、認知・感情・行動の3つのif-thenルールがすべて防衛側に倒れる。
恋愛の俗説を、心理学の原典まで遡って確かめています。
根拠の強さを書けない主張は、このサイトでは扱いません。