ポジティブ幻想
縦断研究・1996年・JPSP
この研究は何をしたか
パートナーを本人の自己評価より良く見ている度合い(理想化)が、関係の満足度とどう結びつくかを調べた。
何が分かったか
パートナーを実際より良く見ている人のほうが、関係に満足していた。しかも理想化された側の自己評価も上がっていた。
読むときの注意
理想化がどこまで有益かには上限があると考えられ、現実と乖離しすぎた場合の効果は別に検討されている。
この研究が根拠になっている悩み(5件)
- 「好き避け」は本当にあるのか 強い
「近づきたい」と「傷つきたくない」が競合し、自己防衛が勝った状態として説明できる。 - 返信が遅いのは脈なしか 根拠なし
返信速度と好意の強さを結びつけた研究は見当たらない。 - 相手を美化するのは危険か そこそこ
パートナーを本人の自己評価より良く見ている人のほうが、関係に満足していた。しかも理想化された側の自己評価も上がっていた。 - 自信は、本当に効くのか そこそこ
自己評価は関係の維持に効く。ただし「フリ」で他の選択肢できる証拠はない。 - なぜ「追う側」と「逃げる側」に分かれるのか 弱い
不安が高い側は近づこうとし、回避が高い側は距離を取る。この組み合わせで循環が起きやすいという報告がある。
関係する理論
- ポジティブ幻想(社会心理学 / 関係維持)
パートナーを本人の自己評価より良く見ている度合いが、関係の満足度と結びつく。
同じ話題で参照している研究
- リスク調整モデル(レビュー・2006)
相手の好意への確信が高い人は、脅威になりうる出来事を関係の確認に使う。確信が低い人は、同じ出来事を愛情が弱まった証拠として解釈し、先に距離を取る。 - 拒絶感受性(実験(4研究)・1996)
拒絶感受性が高い人ほど、そっけない対応などの曖昧な行動に意図的な拒絶を読み取った。本人もパートナーも関係に不満を抱えやすい。 - 拒絶感受性メタ分析(メタ分析・2023)
拒絶感受性が高い人ほど、自己評価する魅力度が低く、嫉妬が強く、パートナーからの愛情表現を少なく知覚する傾向があった。 - 相互依存理論(理論書・1959)
投資モデルの「満足度」と「代替の質」はここから直接引き継がれている。 - 恋愛への愛着理論の適用(実証研究・1987)
恋愛関係にも、安定・不安・回避に対応するパターンが観察されることを示した。以後の成人愛着研究の出発点。 - 認知-感情処理システム(理論・1995)
拒絶感受性のような構成概念は、この枠組みの中に位置づけられる。「性格が弱い」ではなく、特定の状況で起動する処理の癖。
書誌情報
Murray, S. L., Holmes, J. G., & Griffin, D. W. (1996). The benefits of positive illusions: Idealization and the construction of satisfaction in close relationships. Journal of Personality and Social Psychology, 70(1), 79–98.