悩み 27

我慢は関係にいいのか

我慢するのは、関係にとっていいことなのか。

結論から言うと

研究が「いい」と言っているのは、やり返さないこと。飲み込むことではない。この2つは別物なのに、よく混同されている。

恋愛工学の答え

「揉めるくらいなら黙って引け。消耗は損。」

衝突コストの回避です。

研究の答え

きつい態度に同じ態度で返さず、落ち着いて応じる人ほど関係の質が高い。ただし測っているのは言い返さない行動であって、不満を飲み込むことではない。

相手がきつい態度に出たとき、やり返したい衝動を抑えて落ち着いて応じる。その傾向を測った研究があります。この傾向が高いほど関係の質が高く、コミットメントが高い人ほどこの行動を取りやすい。

**ここを「我慢しろ」と読むと誤ります。** 測られているのは破壊的な応酬の連鎖を止める行動であって、不満を伝えないことではありません。建設的に応じるとは、問題を扱うことを含みます。

黙って引くのは、この研究でいう建設的応答ではなく、回避に分類される側です。

出典:Rusbult, C. E., Verette, J., Whitney, G. A., Slovik, L. F., & Lipkus, I. (1991), JPSP, 60(1), 53–78

研究の中身

Rusbult, C. E., Verette, J., Whitney, G. A., Slovik, L. F., & Lipkus, I. (1991). Accommodation processes in close relationships. JPSP, 60(1), 53–78.
何をしたか
パートナーの破壊的な振る舞いに対して、同じように返さず建設的に応じる傾向(適応行動)を測り、関係の質やコミットメントとの関連を調べた。
何が分かったか
適応行動の傾向が高いほど関係の質が高く、コミットメントが高い人ほどこの行動を取りやすかった。
どのくらいの強さか
理論の提示と初期的な実証をあわせた研究。

攻略

男性が読む場合

相手の内側で起きていること
相手が言い返してこないとき、それが建設的な応答なのか回避なのかで意味が正反対になる。黙って引くのは、この研究の分類では回避の側。
どう活かすか
衝突を減らすことと、問題を扱わないことを分ける。応酬の連鎖を止めたうえで、内容には触れる。これが測られている「適応行動」の中身。
使える場面
喧嘩がエスカレートしそうなとき。相手が黙り込んだとき。同じ揉め方を繰り返しているとき。

女性が読む場合

相手の内側で起きていること
我慢していることを「関係のために努力している」と評価する前に、それが応酬を止めているのか、問題を放置しているのかを分ける。
どう活かすか
飲み込むのではなく、返し方を変える。仕返しの衝動を止めることと、言わないことは別のもの。
使える場面
言いたいことを飲み込んだとき。相手の言い方に傷ついたとき。
この機構自体に性差はほとんど報告されていません。違うのは置かれる状況と、社会的な台本のほうです。
「どう活かすか」「使える場面」はモデルから導かれる読み方であって、その手順の効果を検証した研究があるわけではありません。

議論されている点

**測っているのは応酬の連鎖を止める行動であって、我慢することではありません。** 黙って引くのは、この研究の分類では回避の側に入ります。

また相関を含むため、適応行動が関係の質を高めるのか、質が高いから適応できるのかは、この研究だけでは決められません。

使っている理論

  • 適応行動(社会心理学 / 関係維持)— パートナーの破壊的な振る舞いに、同じように返さず建設的に応じる傾向。
  • 投資モデル(社会心理学 / 相互依存理論の系譜)— 関係を続ける力(コミットメント)は、満足度 + 投資量 − 代替の質 で決まる。コミットメントが高い人は、他の選択肢を無意識に低く評価する(代替の切り下げ)。
恋愛の俗説を、心理学の原典まで遡って確かめています。
根拠の強さを書けない主張は、このサイトでは扱いません。