悩み 58

文字のやりとりだけだと、相手を美化するのか

会う前に盛り上がって、会うと冷める。ここには名前のついた説明があります。

結論から言うと

文字だけのやりとりは、対面より親密に感じられることがあります。手がかりが少ないぶん相手を理想化しやすく、送る側も見せたい自分を作りやすく、それが往復して強め合うためと説明されています。

恋愛工学の答え

「会うまでにテンションを上げきれ。」

会う前の温度を重視する運用です。温度が上がる仕組みは、この理論が説明します。

研究の答え

文字だけのやりとりでは、相手の理想化と自己演出が互いを強め合う。

文字だけのやりとりは対面より冷たく事務的になる、というのが当時の見方でした。それに対して出されたのが、逆のことが起きうるという整理です。

仕組みは3つが噛み合っています。受け取る側は、足りない情報を好意的に埋めます。 声も表情もないので、想像で補うしかありません。送る側は、見せたい自分を作りやすい。 書き直せるし、都合の悪い部分は出さずに済みます。そしてそれが往復して強め合う

結果として、対面より親密に感じられる状態が生まれます。会う前に盛り上がって、会うと冷める、という現象はここで説明がつきます。想像で埋めていた部分が、実際の情報で置き換わるからです。

これは「知るほど冷める」という別の知見とも隣り合っています。

出典:Walther (1996)/Berger & Calabrese (1975)

研究の中身

Walther, J. B. (1996). Computer-mediated communication: Impersonal, interpersonal, and hyperpersonal interaction. Communication Research, 23(1), 3–43.
何をしたか
文字だけのやりとりが対面より冷たくなるのか、それとも別の形で親密になるのかを、それまでの研究を整理して論じた。
何が分かったか
文字だけのやりとりは対面より親密に感じられることがある。受け取る側の理想化、送る側の自己演出、それが往復して強め合う過程として説明された。
どのくらいの強さか
理論的な整理であり、単一の実験による検証ではない。

議論されている点

インターネット初期に書かれたもので、いまの通信環境を前提としていません。 写真や動画が当たり前に付く現在、手がかりの少なさという前提はそのままではありません。

また、不確実性低減理論は「相手を知るほど好意が上がる」と予測しますが、曖昧さの魅力の研究は逆を報告しています。どちらが優勢になるかの条件は分かっていません。

使っている理論

  • ハイパーパーソナル・モデル(コミュニケーション学 / 媒介コミュニケーション)— 文字だけのやりとりは、対面より親密に感じられることがある。手がかりが少ないぶん相手を理想化しやすいため。
  • 不確実性低減理論(コミュニケーション学 / 初期のやりとり)— 初対面のやりとりで人がしているのは、相手についての不確かさを減らすこと。不確かさが下がるほど好意は上がると予測される。
  • 曖昧さの魅力(社会心理学 / 対人知覚)— 相手についての情報が増えるほど、好意度が下がる傾向。
恋愛の俗説を、心理学の原典まで遡って確かめています。
根拠の強さを書けない主張は、このサイトでは扱いません。