文字のやりとりだけだと、相手を美化するのか
会う前に盛り上がって、会うと冷める。ここには名前のついた説明があります。
文字だけのやりとりは、対面より親密に感じられることがあります。手がかりが少ないぶん相手を理想化しやすく、送る側も見せたい自分を作りやすく、それが往復して強め合うためと説明されています。
恋愛工学の答え
会う前の温度を重視する運用です。温度が上がる仕組みは、この理論が説明します。
研究の答え
文字だけのやりとりは対面より冷たく事務的になる、というのが当時の見方でした。それに対して出されたのが、逆のことが起きうるという整理です。
仕組みは3つが噛み合っています。受け取る側は、足りない情報を好意的に埋めます。 声も表情もないので、想像で補うしかありません。送る側は、見せたい自分を作りやすい。 書き直せるし、都合の悪い部分は出さずに済みます。そしてそれが往復して強め合う。
結果として、対面より親密に感じられる状態が生まれます。会う前に盛り上がって、会うと冷める、という現象はここで説明がつきます。想像で埋めていた部分が、実際の情報で置き換わるからです。
なお、同じ現象の説明としてよく引かれる「知るほど冷める」(Norton et al., 2007)のほうは、2025年に801人を対象にした事前登録の追試で再現されませんでした。会うと冷めるという経験そのものは否定されていませんが、その仕組みの説明は確定していません。
この整理のうち、手段そのものの効果は2020年に実験で測られています。 39名・95組のスピードデーティングで、最初の会話を文字のやりとりとビデオ通話に無作為に割り当てた研究です。文字だけで話した相手のほうが、社会的な魅力を高く感じていました。 対面に切り替えたあと、その差は残りましたが、恋愛的な魅力のほうは下がりました。
では長くやりとりするほどよいのか。433名の調査では、やりとりの量と会ったときの印象の関係は逆U字でした。少なすぎても低く、多すぎても低い。ただし「何日が最適か」という数字は、原典から確認できていません。
一方で、初デートの前後を追った別の研究(186名→94名)では、やりとりの量も打ち明けた量も、多いほど初デートはうまくいっていました。この2つは一致していません。
研究の中身
議論されている点
インターネット初期に書かれたもので、いまの通信環境を前提としていません。 写真や動画が当たり前に付く現在、手がかりの少なさという前提はそのままではありません。
また、不確実性低減理論は「相手を知るほど好意が上がる」と予測しますが、曖昧さの魅力の研究は逆を報告しています。どちらが優勢になるかの条件は分かっていません。
使っている理論
- ハイパーパーソナル・モデル(コミュニケーション学 / 媒介コミュニケーション)— 文字だけのやりとりは、対面より親密に感じられることがある。手がかりが少ないぶん相手を理想化しやすいため。
- 不確実性低減理論(コミュニケーション学 / 初期のやりとり)— 初対面のやりとりで人がしているのは、相手についての不確かさを減らすこと。不確かさが下がるほど好意は上がると予測される。
- 曖昧さの魅力(社会心理学 / 対人知覚)— 相手についての情報が増えるほど、好意度が下がる傾向。
参照している研究
- Norton, M. I., Frost, J. H., & Ariely, D. (2007). Less is more: The lure of ambiguity, or why familiarity breeds contempt. Journal of Personality and Social Psychology, 92(1), 97–105.
- Walther, J. B. (1996). Computer-mediated communication: Impersonal, interpersonal, and hyperpersonal interaction. Communication Research, 23(1), 3–43.
- Berger, C. R., & Calabrese, R. J. (1975). Some explorations in initial interaction and beyond: Toward a developmental theory of interpersonal communication. Human Communication Research, 1(2), 99–112.
- Antheunis, M. L., Schouten, A. P., & Walther, J. B. (2020). The hyperpersonal effect in online dating: Effects of text-based CMC vs. videoconferencing before meeting face-to-face. Media Psychology, 23(6), 820–839.
- Ramirez, A., Sumner, E. M., Fleuriet, C., & Cole, M. (2015). When online dating partners meet offline: The effect of modality switching on relational communication between online daters. Journal of Computer-Mediated Communication, 20(1), 99–114.
- Sharabi, L. L., & Caughlin, J. P. (2017). What predicts first date success? A longitudinal study of modality switching in online dating. Personal Relationships, 24(2), 370–391.