悩み 71
回避型は、沈黙の間も記憶を整理しているのか
「連絡が途絶えている間も、彼の脳はあなたとの記憶を整理している」と書かれることがあります。
結論から言うと
沈黙中の脳を測った研究は見つからない。近い実験では、回避の目盛りが高い人ほど、見知らぬ人が別れを語る話の細部を、はじめから取り込みにくかった。忘れる速さは同じだった。恋人の記憶を測ったものではない。
恋愛工学の答え
「回避型の沈黙は、心の中であなたを処理している時間。待てば戻る。」
沈黙を「脳内で記憶が再生・整理されている時間」と説明し、待つことを勧める形で語られます。
研究の答え
沈黙中の脳は測られていない。近い実験は、見知らぬ人の話の記憶を測ったもので、恋人の記憶ではない。
大学生に、ある女性が姉妹を亡くした経験を語る20分の録音を聞いてもらい、細部の記憶をテストした実験があります(Fraley ら 2000)。
1つ目の実験(102人)では、回避の目盛りが高い人ほど覚えている量が少なめでした(相関 −.30)。2つ目の実験(229人)では、テストまでの時間を数分から最大21日まで変え、はじめに取り込む量は少なめ(差は小さい)、忘れる速さは同じと分かりました。
ただし、聞いたのは見知らぬ人の話で、恋人の記憶ではありません。脳は測っていません。沈黙の期間も扱っていません。
出典:Fraley, R. C., Garner, J. P., & Shaver, P. R. (2000). JPSP, 79(5), 816–826(本文を確認)
研究の中身
Fraley, R. C., Garner, J. P., & Shaver, P. R. (2000). Adult attachment and the defensive regulation of attention and memory. Journal of Personality and Social Psychology, 79(5), 816–826.
何をしたか
大学生に感情的な内容の録音(20分)を聞かせ、30問で細部の記憶をテスト。2つ目の実験ではテストまでの時間を数分〜最大21日まで変え、取り込みと忘却を分けた。
何が分かったか
回避が高いほど覚えている量が少ない(研究1 r = −.30)。研究2では取り込みが少なめ(β = −.09)で、忘却の速さは回避で変わらなかった。
どのくらいの強さか
研究2の差は小さく、回避が1標準偏差高いと30問中およそ0.6問少ない程度。
議論されている点
見知らぬ人の話での結果で、自分の恋人の記憶では確かめられていません。著者は、本人に切実な場面では別の防衛が働く可能性や、意識できない形の記憶は確かめていないと書いています。
使っている理論
- 成人の愛着(発達心理学 / 対人関係研究への応用)— 近くにいる相手との関係で、人が「近づくこと」と「傷つかないこと」をどう調整するかの枠組み。現在は「見捨てられ不安」と「親密さの回避」という2つの連続した次元で測る。
参照している研究
- Hazan, C., & Shaver, P. (1987). Romantic love conceptualized as an attachment process. Journal of Personality and Social Psychology, 52(3), 511–524.
- Bartholomew, K., & Horowitz, L. M. (1991). Attachment styles among young adults: A test of a four-category model. Journal of Personality and Social Psychology, 61(2), 226–244.
- Fraley, R. C., Vicary, A. M., Brumbaugh, C. C., & Roisman, G. I. (2011). Patterns of stability in adult attachment: An empirical test of two models of continuity and change. Journal of Personality and Social Psychology, 101(5), 974–992.
- Fraley, R. C., Garner, J. P., & Shaver, P. R. (2000). Adult attachment and the defensive regulation of attention and memory: Examining the role of preemptive and postemptive defensive processes. Journal of Personality and Social Psychology, 79(5), 816–826.