悩み 40
恋は3年で冷めるのか
「ドーパミンは3年で切れる」。この言い方を、どこかで聞いたことがあると思う。
結論から言うと
3年という数字に直接の裏づけはない。情熱的な愛が平均として下がるのは本当。ただし長期の関係でも情熱を保っている人がいることが、メタ分析で示されている。
恋愛工学の答え
「恋愛感情には賞味期限がある。切れる前に次へ動け。」
期限つきの資源として扱う発想です。冷める前提で回転させる、という運用で語られます。
研究の答え
「3年」という区切りに実証はない。情熱的な愛は平均的に下がるが、長期でも保っている人がいる。
まず「ドーパミンが3年で切れる」という言い方には、直接それを測った研究がありません。人類学者による仮説が、数字だけ独り歩きしたものです。
実際に測られているのはこうです。**情熱的な愛(passionate love)は平均すると時間とともに下がる**。一方で**仲間的な愛(companionate love)は保たれやすい**。
さらに重要なのは、長期の関係を対象にしたメタ分析で、**長く続いた関係でも情熱的な愛を高く保っている人が一定数いた**ことです。平均が下がることと、全員が下がることは違います。
出典:Acevedo & Aron (2009) の長期関係における情熱的愛のメタ分析
研究の中身
Acevedo, B. P., & Aron, A. (2009). Does a long-term relationship kill romantic love? Review of General Psychology, 13(1), 59–65.
何をしたか
長期の関係における恋愛的な愛(romantic love)と、そこに強迫的な要素が混ざる場合とを分けて、関係満足との関連をまとめたレビュー・メタ分析。
何が分かったか
長期の関係でも恋愛的な愛が保たれている場合があり、それは関係満足と正の関連を持っていた。一方、強迫的な要素が強い場合は長期関係では満足と結びつかなかった。
どのくらいの強さか
複数研究の統合。長期関係を対象にしたものに絞っている点が特徴。
攻略
男性が読む場合
相手の内側で起きていること
相手の熱が下がったように見えるとき、「賞味期限」ではなく、共有している新しい入力が減っている可能性がある。情熱的な愛は平均として下がるが、下がらない人もいる。
どう活かすか
「冷めたから次」に進む前に、二人で目新しいことをする機会を一度作って、変化があるかを見る。ただの快い活動では同じ効果が出ないという結果がある。
使える場面
付き合って2〜3年が経ったとき。会話が業務連絡だけになったと感じたとき。
女性が読む場合
相手の内側で起きていること
以前ほど高ぶらないことは、関係が失敗した証拠ではない。平均の傾向として起きることで、長期でも情熱を保っている人がいる。
どう活かすか
「3年だから仕方ない」で説明を終わらせない。下がったのが情熱なのか、共有する時間なのかを分けて見る。
使える場面
記念日に以前ほど気持ちが動かなかったとき。周りから「そういう時期」と言われたとき。
この機構自体に性差はほとんど報告されていません。違うのは置かれる状況と、社会的な台本のほうです。
「どう活かすか」「使える場面」はモデルから導かれる読み方であって、その手順の効果を検証した研究があるわけではありません。
「どう活かすか」「使える場面」はモデルから導かれる読み方であって、その手順の効果を検証した研究があるわけではありません。
議論されている点
**「3年」「4年」という数字には、それを直接測った研究がありません。** 離婚の統計と進化的な仮説から組み立てられた説明が、数字だけ独り歩きしています。
「ドーパミンが切れる」という言い方も同様です。脳内物質の時間経過を恋愛関係で直接追った研究は、この主張を支えられる形では存在しません。
言えるのは、情熱的な愛は平均として下がるが、下がらない人もいる、というところまでです。
使っている理論
- 自己拡張モデル(社会心理学 / 動機づけと親密性)— 人は自己を拡張する(できることや視野を広げる)動機を持ち、親密な関係はその主要な手段になる。
参照している研究
- Heyman, R. E., & Smith Slep, A. M. (2001). The hazards of predicting divorce without crossvalidation. Journal of Marriage and Family, 63(2), 473–479.
- Aron, A., Melinat, E., Aron, E. N., Vallone, R. D., & Bator, R. J. (1997). The experimental generation of interpersonal closeness: A procedure and some preliminary findings. Personality and Social Psychology Bulletin, 23(4), 363–377.
- Aron, A., Norman, C. C., Aron, E. N., McKenna, C., & Heyman, R. E. (2000). Couples' shared participation in novel and arousing activities and experienced relationship quality. Journal of Personality and Social Psychology, 78(2), 273–284.
- Aron, A., Aron, E. N., & Smollan, D. (1992). Inclusion of Other in the Self Scale and the structure of interpersonal closeness. Journal of Personality and Social Psychology, 63(4), 596–612.