悩み 25

「一心同体」は良いことなのか

相手と一体になるほど、いい関係なのか。

結論から言うと

親密さは「相手をどれだけ自分の一部として取り込んでいるか」でよく測れる。ただし取り込みすぎが常に良いとは限らない。

恋愛工学の答え

「依存させたほうが関係は安定する。」

相手の自立を減らす方向の運用です。

研究の答え

相手を自分の一部として取り込んでいる度合いが、親密さをよく捉える。ただし取り込みが常に良いとは限らない。

二つの円の重なり具合を選ばせるだけの尺度が、長い質問紙と同等以上に親密さを予測しました。**親密さの正体は「相手をどれだけ自分に取り込んでいるか」だ**、という見方です。

ただしこれは記述であって推奨ではありません。取り込みが進むと、相手の成功が自分の成功になる一方で、境界の消失として現れる場合もある。この尺度自体は良し悪しを測っていません。

「依存させる」戦術との違いは、取り込みが**双方向に起きているか**です。片方だけが取り込んでいる状態は、この尺度では高く出ません。

出典:Aron, A., Aron, E. N., & Smollan, D. (1992), JPSP, 63(4), 596–612

研究の中身

Aron, A., Aron, E. N., & Smollan, D. (1992). Inclusion of Other in the Self Scale and the structure of interpersonal closeness. JPSP, 63(4), 596–612.
何をしたか
二つの円の重なり具合を選ばせるだけで親密さを測る尺度を開発し、既存の質問紙と比べて妥当性を検証した。
何が分かったか
「相手を自分の一部として取り込んでいる度合い」が親密さをよく捉え、単純な図形選択が長い質問紙と同等以上の予測力を持った。
どのくらいの強さか
尺度開発研究。以後、親密さの標準的な測定手段のひとつになっている。

攻略

男性が読む場合

相手の内側で起きていること
親密さの正体は「相手をどれだけ自分に取り込んでいるか」で捉えられる。相手の成功が自分の成功のように感じられるかどうかが目安になる。片方向だと、この指標は高く出ない。
どう活かすか
距離を測るとき、好意の量ではなく取り込みの度合いで見る。相手の予定が自分の予定として頭に入っているか。ただし取り込みを一方的に増やそうとするのは、依存の設計であって親密さの設計ではない。
使える場面
関係の深さを判断したいとき。付き合うかどうか決めるとき。相手との距離感に迷ったとき。

女性が読む場合

相手の内側で起きていること
取り込みが進むのは自然だが、境界が消えることとは別。相手の成功を自分の成功と感じることと、自分がなくなることは違う。
どう活かすか
関係が深まる過程で違和感が出たとき、取り込みの度合いではなく双方向かどうかを見る。片方だけが取り込んでいる状態は、この尺度では親密とは出ない。
使える場面
相手に合わせすぎていると感じたとき。自分の時間がなくなったとき。
この機構自体に性差はほとんど報告されていません。違うのは置かれる状況と、社会的な台本のほうです。
「どう活かすか」「使える場面」はモデルから導かれる読み方であって、その手順の効果を検証した研究があるわけではありません。

議論されている点

この尺度は親密さを測るもので、良し悪しを測っていません。取り込みが進むことが常に望ましいとは示していない。

境界の消失として現れる場合の扱いは別に議論されており、依存を推奨する根拠にはなりません。

使っている理論

  • 自己への他者の取り込み(社会心理学 / 親密性の測定)— 相手を自分の一部として取り込んでいる度合いが、親密さをよく捉える。
  • 自己拡張モデル(社会心理学 / 動機づけと親密性)— 人は自己を拡張する(できることや視野を広げる)動機を持ち、親密な関係はその主要な手段になる。
恋愛の俗説を、心理学の原典まで遡って確かめています。
根拠の強さを書けない主張は、このサイトでは扱いません。