悩み 45
デートは、終わり方で決まるのか
何時間一緒にいたかより、どう終わったか。記憶の研究が言っていることです。
結論から言うと
体験の記憶は、いちばん強かった瞬間と終わり方でほぼ決まり、長さはあまり効きません。ただしこれは実験室の不快刺激で確認されたもので、デートを直接測った研究ではありません。
恋愛工学の答え
「別れ際が肝心。余韻を残して切り上げろ。」
引き際の設計を重視する運用です。結論だけがこの法則と一致します。
研究の答え
体験の評価は、ピークと終わりに強く左右され、持続時間の影響は小さい。
冷たい水に手を入れる実験があります。短い版と、同じ内容のあとに少しましな時間を足した長い版を比べ、どちらをもう一度やりたいか聞きました。
総量としては苦痛が多いはずの長い版を、多くの人が選びました。記憶に残るのは、いちばんつらかった瞬間と、終わり方だったのです。長さはほとんど効いていませんでした。
ここから「体験している自分」と「思い出す自分」は別だ、という見方が広がりました。決めるのは思い出すほうです。
恋愛では「長く会うより、いい終わり方をしたほうが印象に残る」という形で使われます。ただしこれは応用であって、検証された結論ではありません。
出典:Kahneman, Fredrickson, Schreiber & Redelmeier (1993)
研究の中身
Kahneman, D., Fredrickson, B. L., Schreiber, C. A., & Redelmeier, D. A. (1993). When more pain is preferred to less: Adding a better end. Psychological Science, 4(6), 401–405.
何をしたか
冷たい水に手を入れる不快な体験を、短い版と、同じ内容に少しましな時間を足した長い版で比べ、どちらをもう一度やりたいかを聞いた。
何が分かったか
総量としては苦痛が多いはずの長い版を、多くの人が選んだ。記憶はいちばん強かった瞬間と終わり方に左右され、長さはあまり効いていなかった。
どのくらいの強さか
実験室での不快刺激。医療処置でも同様の結果が報告されている。
議論されている点
確認されたのは不快な体験です。楽しい体験でも同じように働くかは別の検証が要ります。
また、デートや会話の評価を直接測った研究ではありません。「別れ際が肝心」という形での適用は、この研究が示した結論ではなく解釈です。
使っている理論
- ピーク・エンドの法則(認知心理学 / 記憶と評価)— 体験の記憶は、いちばん強かった瞬間と終わり方でほぼ決まり、長さはあまり効かないという法則。
- ネガティビティ・バイアス(心理学全般 / 情報処理の非対称)— 悪い出来事は良い出来事より、心理的な影響が強く長く残る。
参照している研究
- Baumeister, R. F., & Leary, M. R. (1995). The need to belong: Desire for interpersonal attachments as a fundamental human motivation. Psychological Bulletin, 117(3), 497–529.
- Baumeister, R. F., Bratslavsky, E., Finkenauer, C., & Vohs, K. D. (2001). Bad is stronger than good. Review of General Psychology, 5(4), 323–370.
- Kahneman, D., Fredrickson, B. L., Schreiber, C. A., & Redelmeier, D. A. (1993). When more pain is preferred to less: Adding a better end. Psychological Science, 4(6), 401–405.