悩み 09
第一印象は何秒で決まるのか
「第一印象は3秒で決まる」。この数字はどこから来たのか。
結論から言うと
3秒にも7秒にも出典がない。ただし「ほんの短い観察でも人の判断はけっこう当たる」というのは本当。
恋愛工学の答え
「第一印象は数秒で決まる。だから見た目と入りの数秒に全部を投資しろ。」
「メラビアンの法則」などとセットで語られることが多く、具体的な秒数が添えられるのが特徴です。
研究の答え
ごく短い観察でも他者の判断はかなり当たる。ただし「3秒」「7秒」といった具体的な秒数に出典はない。
ほんの短い場面を見ただけで下した判断が、後の結果をどれだけ当てるか。それを調べたメタ分析があります。5分以下、短いものでは30秒程度の観察でも、人柄や対人的な結果をかなりの精度で予測できることが示されました。
ただし、この研究は「印象が何秒で確定するか」を測ったものではありません。「短い観察でも判断が当たる」ことと「印象が何秒で固定される」ことは、別の主張です。
ネットで流通している「3秒」「7秒」「15秒」といった数字は、この研究からは出てきません。
出典:Ambady, N., & Rosenthal, R. (1992). Psychological Bulletin, 111(2), 256–274
研究の中身
Ambady, N., & Rosenthal, R. (1992). Thin slices of expressive behavior as predictors of interpersonal consequences: A meta-analysis. Psychological Bulletin, 111(2), 256–274.
何をしたか
5分以下の短い行動の切れ端(thin slices)を観察者に見せ、その判断がどのくらい後の結果を予測するかを調べた研究群を統合した。
何が分かったか
30秒程度の観察でも、人柄の評価や対人的な結果をかなりの精度で予測できた。観察時間を長くしても、精度は劇的には上がらなかった。
どのくらいの強さか
予測できる対象は、教員の評価、欺瞞の検出、対人関係の質など幅広い。
攻略
男性が読む場合
相手の内側で起きていること
相手は短時間で判断を下しているし、その判断はかなり当たる。ただし「何秒で確定するか」は測られていない。当たることと、更新されないことは別。
どう活かすか
入りに投資する判断は研究と矛盾しない。ただし「最初の数秒で決まるから後は無駄」という含意は支持されていない。挽回不能を前提にした投資配分にしない。
使える場面
初対面の場に出るとき。面接的な場面で緊張するとき。第一印象を失敗したと感じたとき。
女性が読む場合
相手の内側で起きていること
相手も短時間であなたを判断しているが、それは固定された評価ではない。短時間判断の精度が高いことと、判断が変わらないことは別の主張。
どう活かすか
第一印象が悪かったから終わり、と考える必要はない。逆に、第一印象が良かったことを関係の保証として扱わない。どちらも更新される。
使える場面
初対面で緊張してうまく話せなかったとき。相手の印象が途中で変わったとき。第一印象だけで判断されたと感じたとき。
この機構自体に性差はほとんど報告されていません。違うのは置かれる状況と、社会的な台本のほうです。
「どう活かすか」「使える場面」はモデルから導かれる読み方であって、その手順の効果を検証した研究があるわけではありません。
「どう活かすか」「使える場面」はモデルから導かれる読み方であって、その手順の効果を検証した研究があるわけではありません。
議論されている点
この研究が測ったのは「観察者の判断が当たるか」であって、「印象がいつ固定されるか」ではありません。ここを混同すると、「数秒で決まるから挽回できない」という別の主張にすり替わります。
「3秒」「7秒」といった数字は、この研究にも他の研究にも典拠が見当たりません。同じ文脈でよく引かれる「メラビアンの法則」も、元の実験は限定的な条件のもので、一般的な対人印象の配分を示したものではありません。