悩み 42
スキンシップは、関係を強めるのか
「オキシトシンが出るから」という説明を、よく見かける。
結論から言うと
触れ合いと関係の満足には関連がある。ただし「オキシトシンが出るから愛情が深まる」という単純な図式は、研究が支持している範囲を超えている。
恋愛工学の答え
「接触を増やして距離を詰めろ。身体的接触は関係を進める。」
段階を上げる手続きとして語られます。
研究の答え
触れ合いの多さと関係の満足には関連がある。ただしホルモン一つで説明する図式は単純化しすぎ。
日常的な触れ合いが多いカップルほど関係の満足度が高い、という関連は複数の研究で報告されています。ここまでは支持されています。
問題は説明のしかたです。「オキシトシンが愛情ホルモンだから」という言い方は、**あまりに多くを1つの物質に負わせています**。オキシトシンは信頼だけでなく、状況によっては警戒や内集団びいきを強めることも報告されていて、単純な「愛情ホルモン」ではありません。
また関連の向きも決められません。仲が良いから触れるのか、触れるから仲が良くなるのか。
出典:触れ合いと関係満足に関する研究/オキシトシンの効果に関する批判的レビュー
研究の中身
日常的な身体接触と関係満足の関連を扱った研究/オキシトシンの効果に関する批判的レビュー
何をしたか
日誌法などで日常の触れ合いの頻度を記録し、関係の満足度と対応させる。あわせて、オキシトシン投与実験の結果を整理したレビューを参照する。
何が分かったか
触れ合いが多いほど関係満足が高い、という関連が繰り返し報告されている。一方でオキシトシンの効果は文脈依存で、信頼を高める場面もあれば警戒や内集団びいきを強める場面もある。
どのくらいの強さか
関連の報告は多いが、多くが相関。オキシトシン投与実験は少人数で、再現性の議論がある。
攻略
男性が読む場合
相手の内側で起きていること
触れることを段階を上げる手続きとして使うと、相手の回避の目盛りが高いときに逆に働く。心地よいかどうかは、関係の状態と相手の回避の両方で変わる。
どう活かすか
接触の量を増やすのではなく、断りやすい形にする。相手が自分から近づく場面があるかを見る。
使える場面
距離を詰めたいと思ったとき。「オキシトシンが出るから」という説明を見かけたとき。
女性が読む場合
相手の内側で起きていること
触れられることが心地よくないとき、それは相手を嫌いだからとは限らない。回避の目盛りが上がっている場面かもしれない。
どう活かすか
「愛情ホルモンが出るから触れ合うべき」を義務として受け取らない。心地よい場面と、そうでない場面を分けて見る。
使える場面
スキンシップを求められて負担に感じたとき。自分から触れたくなる場面との差に気づいたとき。
この機構自体に性差はほとんど報告されていません。違うのは置かれる状況と、社会的な台本のほうです。
「どう活かすか」「使える場面」はモデルから導かれる読み方であって、その手順の効果を検証した研究があるわけではありません。
「どう活かすか」「使える場面」はモデルから導かれる読み方であって、その手順の効果を検証した研究があるわけではありません。
議論されている点
**「オキシトシン=愛情ホルモン」は単純化です。** 一つの物質に、信頼・愛着・絆のすべてを負わせる説明は、研究の実態から離れています。
また触れ合いと満足の関連は相関で、向きが決められません。仲が良いから触れる、という順序も同じくらい成り立ちます。
「接触を増やせば進む」を手続きとして運用する根拠には、なりません。
使っている理論
- 成人の愛着(発達心理学 / 対人関係研究への応用)— 近くにいる相手との関係で、人が「近づくこと」と「傷つかないこと」をどう調整するかの枠組み。現在は「見捨てられ不安」と「親密さの回避」という2つの連続した次元で測る。
参照している研究
- Hazan, C., & Shaver, P. (1987). Romantic love conceptualized as an attachment process. Journal of Personality and Social Psychology, 52(3), 511–524.
- Bartholomew, K., & Horowitz, L. M. (1991). Attachment styles among young adults: A test of a four-category model. Journal of Personality and Social Psychology, 61(2), 226–244.