失恋と体の痛みの重なり
脳画像実験・2011年・PNAS
この研究は何をしたか
望まない別れを経験して間もない人に元の相手の写真を見せ、熱による痛みを与えたときの脳活動と比べた。
何が分かったか
体の感覚に関わる領域に、両方で重なる活動が見られた。先行研究より感覚寄りの領域まで重なっていた。
読むときの注意
参加者は最近フラれた人に限られ、標本は大きくない。ここでも領域の重なりから経験の同一性は導けない。
この研究が置かれている文脈
2003年の研究より一歩進んで、感覚そのものに関わる領域の重なりを報告したものです。ただし逆推論の問題は同じように残ります。
この研究が根拠になっている悩み(2件)
- 元恋人のSNSを見続けると、立ち直れないのか そこそこ
見る頻度が高い人ほど、苦しさ・未練・欲求が強く、成長の実感が低い。会う時間が多い人は2か月後の苦しさが高い。 - 拒絶されると、本当に「痛い」のか そこそこ
拒絶時の脳活動は、痛みに関わる領域と一部重なる。ただし同じ経験だとは示されていない。
関係する理論
- 社会的痛み(社会神経科学 / 拒絶研究)
人から拒絶されたときの反応は、体の痛みの仕組みと一部を共有しているのではないか、という仮説。
同じ話題で参照している研究
- 投資モデルのメタ分析(メタ分析・2003)
満足度・投資量・代替の質はいずれもコミットメントと有意に関連し、合わせて分散のおよそ3分の2を説明した。もっとも強いのは満足度。 - 認知-感情処理システム(理論・1995)
拒絶感受性のような構成概念は、この枠組みの中に位置づけられる。「性格が弱い」ではなく、特定の状況で起動する処理の癖。 - 別れの予測因のメタ分析(メタ分析・2010)
もっとも強く予測したのはコミットメント・愛情・関係への適応といった内側の変数。人口統計的な属性の予測力は弱かった。 - 失恋から回復しはじめる時点(日誌法(4週間)・2006)
別れを受け入れていることが、愛着の安定と悲しみの回復の関連を媒介していた。相手への愛情・怒り・とらわれ型の愛着が強いほど、期間内に悲しみから回復する確率は低かった。 - 拒絶と痛みの脳活動(脳画像実験・2003)
体の痛みに関わるとされる領域と重なる活動が見られた。つらさの報告が強い人ほど、その活動も強かった。 - 逆推論は成り立つのか(方法論批判・2006)
多くの領域はさまざまな課題で働くため、活動から心の状態を逆向きに当てるのは難しい。推論の確からしさは、その領域がどれだけその働きに特化しているかで決まる。
書誌情報
Kross, E., Berman, M. G., Mischel, W., Smith, E. E., & Wager, T. D. (2011). Social rejection shares somatosensory representations with physical pain. Proceedings of the National Academy of Sciences, 108(15), 6270–6275.