拒絶と痛みの脳活動
脳画像実験・2003年・Science
この研究は何をしたか
仲間外れにされる場面を実験的に作り、そのときの脳活動を測った。
何が分かったか
体の痛みに関わるとされる領域と重なる活動が見られた。つらさの報告が強い人ほど、その活動も強かった。
読むときの注意
領域が重なることと、同じ経験であることは別です。 ある領域が働いたことから心の状態を逆向きに推定する読み方には、方法論上の批判があります。
この研究が置かれている文脈
「拒絶は本当に痛い」という言い方の出どころです。ただしこの研究が示したのは活動領域の重なりであって、痛みそのものが起きていることではありません。脳の話は説明力があるように聞こえますが、この研究の射程は思われているより狭いので、逆推論への批判と必ずセットで読む必要があります。
この研究が根拠になっている悩み(2件)
- 元恋人のSNSを見続けると、立ち直れないのか そこそこ
見る頻度が高い人ほど、苦しさ・未練・欲求が強く、成長の実感が低い。会う時間が多い人は2か月後の苦しさが高い。 - 拒絶されると、本当に「痛い」のか そこそこ
拒絶時の脳活動は、痛みに関わる領域と一部重なる。ただし同じ経験だとは示されていない。
関係する理論
- 社会的痛み(社会神経科学 / 拒絶研究)
人から拒絶されたときの反応は、体の痛みの仕組みと一部を共有しているのではないか、という仮説。
同じ話題で参照している研究
- 投資モデルのメタ分析(メタ分析・2003)
満足度・投資量・代替の質はいずれもコミットメントと有意に関連し、合わせて分散のおよそ3分の2を説明した。もっとも強いのは満足度。 - 認知-感情処理システム(理論・1995)
拒絶感受性のような構成概念は、この枠組みの中に位置づけられる。「性格が弱い」ではなく、特定の状況で起動する処理の癖。 - 別れの予測因のメタ分析(メタ分析・2010)
もっとも強く予測したのはコミットメント・愛情・関係への適応といった内側の変数。人口統計的な属性の予測力は弱かった。 - 失恋から回復しはじめる時点(日誌法(4週間)・2006)
別れを受け入れていることが、愛着の安定と悲しみの回復の関連を媒介していた。相手への愛情・怒り・とらわれ型の愛着が強いほど、期間内に悲しみから回復する確率は低かった。 - 失恋と体の痛みの重なり(脳画像実験・2011)
体の感覚に関わる領域に、両方で重なる活動が見られた。先行研究より感覚寄りの領域まで重なっていた。 - 逆推論は成り立つのか(方法論批判・2006)
多くの領域はさまざまな課題で働くため、活動から心の状態を逆向きに当てるのは難しい。推論の確からしさは、その領域がどれだけその働きに特化しているかで決まる。
書誌情報
Eisenberger, N. I., Lieberman, M. D., & Williams, K. D. (2003). Does rejection hurt? An fMRI study of social exclusion. Science, 302(5643), 290–292.