社会的痛み
Social pain · 社会神経科学 / 拒絶研究
何を言っている理論か
人から拒絶されたときの反応は、体の痛みの仕組みと一部を共有しているのではないか、という仮説。
心理学のどこにあるか
つながりを失うことが生存に直結する動物にとって、痛みの仕組みを転用するのは効率がよい、という進化的な発想から出ている。所属欲求の研究とつながる位置にあります。
研究の性質と注意
示されているのは脳の活動する場所の重なりであって、同じ経験が起きていることではありません。 ある領域が働いたことから心の状態を逆向きに決めつける読み方には方法論上の批判があり、この仮説はその批判の射程にまるごと入ります。「拒絶は本当に痛い」という言い方は、研究が言っている範囲より一歩踏み込んでいます。
この理論の主要な研究(3本)
- 認知-感情処理システム(理論・1995)
拒絶感受性のような構成概念は、この枠組みの中に位置づけられる。「性格が弱い」ではなく、特定の状況で起動する処理の癖。
Mischel, W., & Shoda, Y. (1995). A cognitive-affective system theory of personality. Psychological Review, 102(2), 246–268. - 拒絶と痛みの脳活動(脳画像実験・2003)
体の痛みに関わるとされる領域と重なる活動が見られた。つらさの報告が強い人ほど、その活動も強かった。
Eisenberger, N. I., Lieberman, M. D., & Williams, K. D. (2003). Does rejection hurt? An fMRI study of social exclusion. Science, 302(5643), 290–292. - 失恋と体の痛みの重なり(脳画像実験・2011)
体の感覚に関わる領域に、両方で重なる活動が見られた。先行研究より感覚寄りの領域まで重なっていた。
Kross, E., Berman, M. G., Mischel, W., Smith, E. E., & Wager, T. D. (2011). Social rejection shares somatosensory representations with physical pain. Proceedings of the National Academy of Sciences, 108(15), 6270–6275.