社会的役割理論
理論・レビュー・1999年・American Psychologist
この研究は何をしたか
行動の性差が「進化した生得的な傾向」から来るのか、「社会の中で男女が置かれる役割」から来るのかを、同じデータに対する二つの説明として比較検討した。
何が分かったか
多くの性差は、男女が占める社会的役割と、そこで期待される振る舞いから説明できる。役割配置が変われば性差の大きさも変わる。
読むときの注意
生得的要因を全否定する主張ではなく、説明の重みづけをめぐる議論。ただし『文化によって差の大きさが変わる』という観測は、社会側の説明を支持する。
この研究が根拠になっている悩み(4件)
- 「男が追う、女が待つ」はどこから来たのか そこそこ
行動の男女差の多くは、それぞれが置かれた社会的な役割と、そこで期待される振る舞いから説明できる。 - なぜ男は「男らしさ」を証明し続けるのか そこそこ
「男らしさ」は、女らしさと違って継続的に証明し続けないと失われる状態として、社会的に扱われている。 - 同じ行動が、男女で違う評価をされる 強い
同じ性的な振る舞いが、男性と女性で違う評価と期待を受ける。統合された証拠がある。 - 男女は根本的に違うのか 弱い
平均の差はあるが小さく、国による差のほうが大きい。脳の性差を根拠にした説明は裏づけが弱い。
関係する理論
- 社会的役割理論(社会心理学 / 性差の起源をめぐる論争)
行動の性差の多くは、男女が社会の中で占める役割と、そこで期待される振る舞いから生じる。
同じ話題で参照している研究
- 配偶者選好の37文化比較(国際比較調査・1989)
資源や若さに関する選好で、文化を越えて一貫した平均差が見られた。 - 理想と実際のズレ(実証研究・2008)
事前に申告した理想は、実際の魅力の判断をほとんど予測しなかった。申告された性差は、実際の選択には現れにくい。 - オンラインデーティングの検証(批判的レビュー・2012)
出会いの数を増やす点は明確な利点。一方、事前のプロフィール情報から相性を予測できるという主張には、支持する証拠が乏しい。 - 男らしさの不安定性(実験(5研究)・2008)
男らしさは、女らしさと違って継続的に証明し続けないと失われる状態として捉えられていた。だから男性は、その資格を脅かされると強い不安を示す。 - 性の二重基準(メタ分析・2020)
男性の活発な性行動のほうが、期待されやすく、肯定的に評価されやすいという伝統的な二重基準の存在が確認された。 - 性差の効果量を統合する(メタ統合・2015)
平均的な性差は小さかった。 項目ごとのばらつきはあるが、全体としては差より共通点のほうが大きい、という結論になった。
書誌情報
Eagly, A. H., & Wood, W. (1999). The origins of sex differences in human behavior: Evolved dispositions versus social roles. American Psychologist, 54(6), 408–423.