悩み 17
気持ちは、思っているほど伝わっていない
緊張しているのも、好きなのも、相手にはバレていると思っていないか。
結論から言うと
バレていない。自分の内心がどれくらい顔に出ているかを、人は大きく見積もりすぎる。緊張も好意も、思っているより伝わっていない。
恋愛工学の答え
「察してもらえないなら縁がない。分かる相手とだけ付き合え。」
相性の問題として処理する発想です。判断は速くなりますが、原因の特定にはなっていません。
研究の答え
自分の内心が相手に漏れている度合いを、人は一貫して過大に見積もる。緊張も好意も、相手にはほとんど見えていない。
緊張している人や嘘をついている人に、「どのくらい見抜かれると思うか」を先に予想させる。そのうえで実際にどれだけ見抜かれたかと比べた実験があります。
予測は一貫して過大でした。自分では顔に出ていると感じる動揺が、相手にはほとんど見えていない。
これを恋愛に当てると、厄介な帰結が出ます。**あなたが「これだけ態度に出したのだから伝わったはず」と思っている好意は、相手には届いていない可能性が高い。** そして相手の側でも同じことが起きています。お互いに「伝えた」と思って、お互いに受け取っていない。
出典:Gilovich, T., Savitsky, K., & Medvec, V. H. (1998), JPSP, 75(2), 332–346
研究の中身
Gilovich, T., Savitsky, K., & Medvec, V. H. (1998). The illusion of transparency. JPSP, 75(2), 332–346.
何をしたか
嘘をついている人・緊張している人に、それが相手にどのくらい見抜かれると思うかを予測させ、実際の見抜かれ具合と比較した。
何が分かったか
予測は一貫して過大だった。自分では明らかだと感じる内心の状態が、相手にはほとんど見えていない。
どのくらいの強さか
複数の実験で再現されている。
攻略
男性が読む場合
相手の内側で起きていること
相手も同じ錯覚の中にいる。相手が「これだけ態度に出したのに」と思っている好意は、あなたに届いていない可能性がある。逆にあなたが出したつもりの合図も、相手には見えていない。両側で同時に起きる。
どう活かすか
察してもらう前提を捨てて、言葉にする量を1段階だけ上げる。「また今度」を日付にする、「楽しかった」を口に出す。過剰なアピールではなく、自分が思っているより1段階だけ明示にするのが適量。
使える場面
何度も会っているのに関係が進まないとき。相手の気持ちが読めないとき。好意を出しているつもりなのに友達扱いされるとき。
女性が読む場合
相手の内側で起きていること
相手が鈍いのではなく、あなたの合図が想定より小さく届いている可能性がある。自分では十分に出したと感じる好意が、相手の側では検知されていない。これは相手の感度の問題ではなく、送信側の錯覚。
どう活かすか
「察してくれない」を相性の判定に使う前に、明示の度合いを一段階上げて反応を見る。伝わっていないだけなのか、伝わったうえで動かないのかを切り分けられる。
使える場面
好意に気づいてもらえないとき。「察してほしい」と思ってしまうとき。相手の鈍さに苛立ったとき。
この機構自体に性差はほとんど報告されていません。違うのは置かれる状況と、社会的な台本のほうです。
「どう活かすか」「使える場面」はモデルから導かれる読み方であって、その手順の効果を検証した研究があるわけではありません。
「どう活かすか」「使える場面」はモデルから導かれる読み方であって、その手順の効果を検証した研究があるわけではありません。
議論されている点
「伝わっていない」ことの証明であって、「伝えなくてよい」ではありません。むしろ逆で、明示しないと伝わらない、と読むべき知見です。
また実験は緊張や嘘の検出を扱っており、恋愛的な好意の伝達をそのまま測ったものではありません。当てはめは自然ですが、そこは推論です。
使っている理論
- 透明性の錯覚(社会心理学 / 自己中心性バイアス)— 自分の内心が相手にどのくらい漏れているかを、人は一貫して過大に見積もる。
参照している研究
- Gilovich, T., Savitsky, K., & Medvec, V. H. (1998). The illusion of transparency: Biased assessments of others' ability to read one's emotional states. Journal of Personality and Social Psychology, 75(2), 332–346.
- Gilovich, T., Medvec, V. H., & Savitsky, K. (2000). The spotlight effect in social judgment: An egocentric bias in estimates of the salience of one's own actions and appearance. Journal of Personality and Social Psychology, 78(2), 211–222.